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第20話
☆誰だお前☆
俺達は透の言葉を遮った声の主の方へ顔を向けた。
「こんな所で大きい声ださんといてー。おっきい部屋の割にめっちゃ響くとこやから」
ニコニコしながら近づいてくる長髪の男。
誰だこいつ?
「おい、柴崎。元はといえばお前のせいでこうなったんだぞ!」
バンっとテーブルに拾ったプリントを叩きつけて透が相手を睨みつけるが意味がないらしい。
ニヤついた顔を変えることなく透に男は近づいた。
「えー、そんなこといわんといて。わし、何にもしてないやんかー」
「引っ付くな!余計に勘違いされる!」
「えーやん。」
そしてわざわざ透の肩と合わさるようにしゃがみこんでは抱きしめる。
「良くない。この女好きが!」
「それは否定せぇへんけど」
透は長髪の男に抱きつかれ、必死に離そうとしている。
なんか2人とも背が高いからあまりいい絵面ではないな。
てか男でこんなことしてる自体俺には無理だ。
いや、何。
偏見、と呼ばれる類は全くないけど免疫がないから見れないってだけで。
風邪には慣れてて免疫はあるが、新種のウイルスに対しては抗体がないので警戒する、みたいなもの。
……分かりにくい例えだな。
少し温かい紅茶を一口飲んだ辺りで透がなんとか引き剥がしたようで、溜め息をつき残りのプリントを再び拾い始める。
「はぁー、透も酷いやつやな。あっ、あんさん透の友達?」
やれやれ、と首をゆっくり振った男がそのまま俺の方へと顔を向ける。
長髪がさらり揺らめかせて一歩近づく。
「えっ、あっ、はい」
一歩近づいた男に大げさかもしれないが肩が跳ねた。
いやな予感しかいたせませぬ。
「おー、そうなんや。はじめまして、わしは柴崎 碧(しばざきあお)ですー。よろしゅうな。」
「はぁ、よろしくお願いします」
俺は人1人分まで来た相手に頭を下げ、柴崎 碧という男を見た。
……一時停止だ。
察してくれ。
いつものパターンだ。
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