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第29話
☆会長と対面☆
「おっ、千秋おかえりー」
どうやら東条 千秋が生徒会室に入って来たらしい。
柴崎が後ろを振り向き、手を振った姿を見てもう帰らないことを確信する。
いや元々帰れる気配なんてなかったけど。
「ただいま」
おや…?
パタリ、扉を閉める音と一緒に聞こえた少し低めの声。
「用事は何だったの?」
心の中で首を傾げた俺を他所に透も振り向く。
「私情だ」
俺はこの声を知ってるぞ。
いや、最近聞いたから覚えてるが正しい。
「私情って喧嘩?」
嘘だろ?
「違げぇよ。どう見たって怪我してねぇだろ」
振り返るのが怖い。
心臓がバクバクしてる。
「おっ、お客さん?」
でも東条 千秋が俺に気づいたことで振り返らなければいけない。
分かってる。
「お客って程のやつじゃないよ。今度の会議の資料を頼まれて届けてくれたんだ」
分かってる。
俺は小さく深呼吸してから後ろを振り向き、東条 千秋を確認する。
あぁ…やっぱりか。
そう、肩を落とす。
俺、神様とかいたら恨むわ。
だってさ…
「へー。資料届けてくれてありがとう」
俺に微笑む東条 千秋は、
昨日俺が
ナンパされたのを助けて、
女装した俺に名を尋ね、
二度と会うことはないと考えて、
『井上 春』という偽りの名を教えた、
あのイケメン金髪だったのだから。
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