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第32話
☆あの日あの道を選んだ己を殴りたい☆
柴崎の話を聞いた後、俺は東条 千秋と出会ったあの日を思い出しては脳内ツッコミのオンパレードをしていた。
「だいぶ内容を省いたな、碧」
「えぇやん。説明っちゅうやつは短くする方が伝わるんや」
いや、長かったと思うぞ。
さりげなくウィンクを飛ばされるとこちらが寒気がしてならない。
イケメン、爆ぜろ。
「でもまぁ、大体は合ってるな」
「とりあえず、理解した。千秋、お前は笑顔で惚れたのかよ」
あー、そういえば女の子の笑顔で惚れたとか言ってたな。
この間俺が笑った後に顔を伺ったら赤かったような気もしない。
再度あの悪夢の出来事が頭から浮かんで、いやいやと手を振る。
何をおっしゃるんだい井上よ。
内心で嘲笑う。
「おう」
「ちなみにその女の子に名前は聞いたりした?」
そうだ、もしかしたら人違いかもしれないな!
俺を助けた後にもう一回女の子を助けたのかも!
「聞いた」
「なんて名前?」
「井上 春。春ちゃん」
なんて考えてたら、見事に俺の考えは否定された。
うわー、俺ってば自惚れ乙じゃん!
早とちりじゃんかー、はっずかしー。
俺、確定☆
なんてふざけてる場合じゃねぇ!
それ俺が咄嗟に考えた偽名だし!
「へー、春ちゃん…ねぇ」
名前を聞いたことで透は気づいたのか俺の方をチラッと見て鼻で笑う。
てかその哀れだとでも言わん顔!
絶対気づいただろ!
そして、東条 千秋。
なんでそんな楽しそうに言う!
お前は仮にも不良でイケメンなんだぞ!
あっ、イケメンはいらない?でも俺には重要。
ここテストでますよ、マーカーを引きなさいですわ。
模範解答はイケメン爆ぜろ。
あぁ、最悪だ。
「おう、春ちゃん。微笑んだ時、マジで天使だと思った」
天使…?
俺のあの女装した姿の笑顔が?
そうか、お前の中の天使は不細工なんだな!
大丈夫かお前の目?
てか目がおかしいんだな。
眼科いけ、眼科。
眼科でドライアイでもなんでもいいから診断されろ。
げっ、今の言葉で寒気してきた。
透…ここって冷房でもつけてる?
めちゃくちゃ寒いです。
「あっ、でもな笑ったというかはにかんだ感じの笑顔だったな。実に可愛いかった」
「へー。」
天使の次は可愛いですか。
余計に寒気してきた…。
お前、雪姉に平凡な顔といわれた俺が女装して、あの貼り付けたような笑顔が可愛いかったのか。
東条 千秋、周りの女の子の笑顔はそんなに変だったのか。
目だけでなく頭もやられてるんだなきっと。
脳外科いってこい、頭を直せ。
そして、透君?笑うの凄い耐えてるな。
さりげなく口元に手で覆っているのは絶対に笑みを隠しているからだ。
震える肩がその証拠である。
やめてくれるか?俺は実に笑えない状態だ。
………。
東条 千秋。
まずお前は眼科でも脳外科でもいいから病院に行け。
お願いだから。
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