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第34話

☆一途にいこうぜ、若者よ☆ 「ねぇ、君、兄弟いる?」 せっかく透が引き寄せて作った隙間を埋めるように東条 千秋が近づいてくる。 「えっ、い、います。姉が1人…」 何度も言うが、整った顔があるのは俺の身体によろしくない。 これ以上下がることはできないのに、己の身を透に引っ付けた。 「へー、名前は?」 「井上 雪奈です」 「えっ、そうなんだ…。」 こいつこんなこと聞いて何が言いたい。 「春ちゃんじゃないんだ…」 なんでそんな悲しそうな顔をする。 「あまりにも春ちゃんと同じ匂いするから、兄弟だと思ったけど…」 だからそれ女装した俺だから。 同じ匂い、同じ遺伝子を持ってますよ、当たり前です。 「兄弟でも匂いは同じなんか?」 「いや、多少違う。」 「なら一緒ちゅうのはおかしない?もしかしたら春ちゃんは化粧でもしてたんとちゃうか?」 「いや、化粧品の匂いは全くしなかった」 そうだぞ柴崎、俺はそんなのしねぇよ! 雪姉も化粧してないっていってたし! 社会人として失格かもしれないが、俺は程よくしてくれればいいかなと思う。 しかし、まぁ……。 「よく化粧の匂いとかわかるな」 俺が思ったことを透が代弁してくれた。 「化粧は独特な匂いするからわかりやすい」 「そ、そうなのか」 いやいや、普通気付かないって。 流石、犬!将来は警察犬になれるよ! 「今の女の子って化粧するのが普通だろ?でも春ちゃんはすっぴんで歩いてナンパされた上、あんな可愛い笑顔できるとか…マジ天使」 …ごめん、さっき普通の人っていったの撤回。 こいつは普通の変態に上書き保存だ。 「可愛い…はは…更に天使とか…。」 透君、俺の頭上で小さく笑うのやめてくれないかな?君とは身長近いから嫌でも笑い声が聞こえるよ。 東条 千秋に気付かれるぞ。 「そんなに春ちゃん可愛いんか。千秋とは中学生の頃からの付き合いやけど…女の子に『可愛い』って言うの初めて聞いたな」 「えっ、千秋ってよく女の人といるのに言ったことないのかよ?!」 「おい、透。その言い方はやめてくれ。俺のこと碧みたいに言うな、碧とは違う」 「そうやでー。千秋はモテるけど女の子に可愛い言わんしな。わしは女の子に可愛いとかいっぱい言うてるで」 柴崎、そういう問題じゃないと思うけど。 「それに千秋の女の子らは『セフレ』やろ?」 「おう。碧…自分といる女の子は『セフレ』ではないような言い方するな」 「そうやで。わし、今までの子ら全員本気で好きやし」 「ふーん」 なんてグダグダ2人は話し続けてる。 あんたらイケメンの自慢を聞かせれてる俺の身にもなってくれ。 そしてセフレいっぱいいるってどういうことだ。 そんなの女の子が可哀想だわ。 1人に絞れないのかお前達。 東条 千秋よくそんなんで女装した俺を好きだと言えるな。 透なんて冷めた目で見てるぞ、俺も人のこと言えないけど。

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