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第40話

☆噂☆ ー数日後の昼休みー お昼ご飯を食べて、空腹を満たすとどうしても眠気というものは襲ってくるものだ。 欠伸をする顔がブサイクと評されてからは、自宅以外で込み上がってくるのを我慢する癖ができてしまった。 でも我慢したとしても眠いものは眠い。 午後の授業まであと数十分ある…なら寝てもいいか。 そんな気持ちで寝る体制に入ろうとした時、ばたばたと足音が近づいてくる。 「なぁ、井上!聞いたか?」 「……何?」 俺に話しかけてきた男は間宮 淳平(まみや じゅんぺい)だ。 淳平とはクラスメイトで友達。 顔は…人のこと言えないけど平凡。 だから淳平とはよく一緒にいる。 まぁ、このクラスの平凡顔の方々とは拒否反応が起こらないから普通に話してる。 それ以外は…察してくれ。 「何って、噂だよ。噂!」 それは俺の眠りを妨げるより重要なのか。 「知らない。なんの噂だよ?」 なんて口には出さないで相手に問う。 そういえば、淳平は噂とか好きだし、情報が早いやつだったな。 「えっ、知らないのかよ。結構広まってるやつだぞ!」 「俺はそういうの興味ないからわからないの。で、なに?」 「興味ないとか…井上らしいけどさ」 俺らしいとはなんだ。 「んで、その噂とはな…」 おい、溜めるな、変に気になるだろう。 淳平はもう一拍ためると俺の目の前を指差した。 「紅目の犬が誰かを狙ってるって言う噂だ!」 「はぁ?」 えっ、淳平。 その噂あってるけど… 「どっちの意味で?」 「どっちの意味って?」 「あっ、いや、なんでもない。詳しく聞かせて」 淳平が俺を不思議そうな目で見ていたがすぐ口を開いた。 「なんか紅目の犬こと、東条 千秋が数日前からある一点の場所をウロウロしてるらしい。しかも険しい顔して。だからか、あの人の子分も話かけられないみたいだ」 えっ、険しい顔…それ怒ってらっしゃるのでしょうか? てか、本当に待ってたのかよ。 「いや、怒ってるわけではなくてオーラが怖いみたいだ。それに東条 千秋が直々に数日も一箇所にいるのも不思議らしい」 「オーラが怖い?」 「東条 千秋は不良トップだけど、怒ることが少ないらしい。そういうのも周りの不良から好かれる理由なんじゃないかな」 たしかにこの前見てた限りだと変態だったけど、普通の人みたいだったな。 変態だったけど。 大事だから二回言う。 「怒らないから、今回の東条 千秋のオーラが怖いってことかな。多分、不良事情はよくわからない。えーと、どこまで話したっけ?」 「俺も不良についてはよくわかんないな。一箇所に数日いるのは不思議ってとこまで聞いた」 「そこか、オッケー。不思議に思われるようになったから子分さん達はこういうようになった。『紅目の犬は誰を狙ってる』って」 「だからその誰って誰だよ?」 まさか俺(春ちゃん)のことじゃないだろうな。 口外してたりしたら俺は余計に東条 千秋に本当のこといえなくなる。 「だからそれをいうって!その誰かっていうのは雲学が敵視してる他の学校のやつではかなと言われてる」 あっ、良かったー。俺じゃない。 なんか安心した。 言っちゃ悪いけど、子分さん達は馬鹿だわ。 「雲学は元々勢力が強かったけど、東条 千秋がトップになってからより強くなって縄張りが広くなった。だからそういうのを潰そうとしてる人もいるからね。東条 千秋はそれにいち早く気づいてあんなことしてるのかも」 淳平は最後に『犬だけに』と笑って付け足した。 動物ってそういうの早く気づくよな。 って、人間を動物と一緒にしたら駄目だわ。 そして、淳平。 お前はなんでそんな詳しい情報持ってるんだ? 俺はそこが気になるな。 …とりあえず、噂と真実は違うことに俺は安心した。

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