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第68話

☆透 side☆ 「ふー。これで邪魔者はいなくなったなー」 柴崎は笑ってこちらを見る。 邪魔者って…仮にも自分達の子分だろ。 「で、どうしたんや?」 「屋上に行くから通せ」 「んん〜、それしか言わへんな。でもあかん、屋上には千秋とこはるんが話しとる」 「だからだよ」 やっぱりか。 柴崎と子分がこの扉の前にいる時点で勘付いていたけど…。 「あかん、あの2人は大事な話しとる。それに透もわかるやろ?」 「……。」 俺だってわかってるさ。 いくら不良とか喧嘩が嫌いでも柴崎と千秋に聞かされたから。 この屋上で大事な話する時は誰だろうと入れてはいけないというルールがあることぐらい知っている。 その話が終わるまたは、『入っていい』という許可があるまで開いてはいけない。 もし、誰かが入ろうとしたら喧嘩してでも止めるってことも。 「だから、通すことはできへん」 わかってる。 でも小春は俺に頼んだんだよ。 『透なら…命日できる前に来てくれるだろ?』 あぁ、言って。 だったら俺は…頼られた俺は助けなきゃいけないんだよ。 大袈裟だけど、そうはならないと思ってはいるけど。 小春の体質を知ってるから。 千秋の気持ち知ってるから。 「………んだよ…」 「えっ?」 「なんかあってからじゃ遅いんだよ!!」 昔…約束してんだよ…小春のこと守るって! だから何がなんでもここを通る! 嫌いな喧嘩してでも。 「なんかあったら…って何言ってるや透?」 「五月蝿い!いいから通せ!」 「わけわからんわ!無理や!」 「このっ!バカ崎ぃぃ!」 俺は柴崎を殴ろうと決めた。 でもそれ同時に屋上の扉が勢いよく開いた。 俺は屋上の扉に顔を向けると、そこには千秋がいた。 千秋が扉を勢いよく開けた為、扉の前にいた柴崎に当たる。 「千秋!痛いやろっ!」 こちらまで痛々しい音が響いたし、ぶつかった柴崎は涙目になりながら千秋に痛みを訴える。 「すまん!」 千秋にしては慌ただしい。 「誰か紙袋…袋だったらなんでもいいからもってねぇか!」 「袋…もってへんわ…」 なんで紙袋…? …………まさかっ! 「あっ、透!屋上いったらあかん!」 「五月蝿い、バカ崎!」 俺は無理矢理千秋を扉からどかし、柴崎の言葉を無視して屋上に入った。 屋上を見渡したらフェイスに寄りかかってる小春は見つかった。 俺はすぐ小春に駆け寄った。 「ハァッ、ハァッ、ヒュ、ハァッ、ハァッ」 「小春!?」 やっぱりか! 紙袋がいるなんて聞いたら過呼吸なってるってすぐわかった。 「ハァッ…とお…ハァッる…?ヒュッハァッ」 「喋らなくていい」 俺はポケットからコンビニ袋を出してすぐ小春の口元に当てた。 「小春、もう大丈夫だ。袋持ってきたから…ほら、深呼吸」 涙目になっている小春は小さく頷いて俺の指示に従って深呼吸を始めた。 「そう、そのまま…ゆっくり」 俺は小春の背中をさすりながら言う。 小春が呼吸する度にコンビニ袋が伸縮する音が響く。 でも深呼吸する度に小春の乱れた呼吸ではなく安定した…普通の呼吸になっていった。 暫くして小春の状態は落ち着いき、俺は安心した。 良かった…間に合って。 全く…世話の焼ける幼馴染だ。 でもそんなやつでも大事だから許してやろう。

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