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第74話
☆空見て笑え☆
透と柴崎がいなくなっても東条 千秋は立ち上がろうとしなかった。
えっ、なんであんたいるの?
仕事に早く行きなさい。
透と柴崎に置いてかれてるぞ。
「なぁ、井上 小春」
「うん?」
またフルネーム呼ぶのかよ。
東条 千秋は立ち上がったと思えば俺に近づいてきた。
えっ、なんで近づいてくるのさ。
しかも目の前に立つのかよ。
「苦しくねぇか?過呼吸とか起こさせて本当すまねぇ」
「えっ、あっ、うん。もう…いいよ」
何いきなり謝ってきて…。
でも意外。
不良ってプライド高くて謝らないイメージあったからこう素直に謝られる所を見るとなんか不思議な気分。
だからといってドキッともなんにもしないけど。
そんな少女漫画的な展開は存在しない。
あっはっはっは。
「でも、俺はお前を諦めねぇから」
東条 千秋は満面の笑みで言ってきた。
「はい?」
「絶対にそのよくわからないイケメン嫌いとやら直して、惚れさせる」
「えっ…」
「だから、覚悟してろよ」
東条 千秋はそういうと屋上から出て行った。
屋上に残ったのは俺のみ…。
………待て待て待て待て待って!!!!
な ん だ 今 の は ? !
今の流れ的にさ!
俺がイケメン嫌いだということを知ったじゃん!
過呼吸起こしたの謝ったじゃんか!
だったらさー
俺、『お前のことは諦めるわ』ってならないわけ?!
「はぁー、本当…あいつなんなの…」
俺はフェイスを背にして寄りかかり、空を見上げて溜め息をついた。
俺…これからの学校生活どうなるんだろう。
なんか怖くなってきたわ……。
はぁ…。
そんな俺を笑うのように鴉の鳴き声と午後の授業の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
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