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第7話 例の噂

「今回のターゲット」 「ターゲット?」 「えー蒼井先生なにも知らないんですか??」 「知らない、興味ない」 先生が立ち上がる。 「松原先生の愛人」その言葉を聞いた途端、びくんと体が震えた。 「おまっ」 がたがたと震える。 「松原先生の愛人って誰?」 「それは背が低くて女の子みたいな男の子」 「それだけ?」 「私たちはその情報しか知らないよね」 「うん」 「てか愛人って括りおかしいだろ、学校なのに」 「まぁ、でもその前の子、退学しちゃったし、なんで事件にならないのか不思議だけどね」 「おい、白幡大丈夫か?」 「へ? はい、あの僕もう行きます」 そそくさと逃げる。 --------------- 「今の子顔色悪っ」 「でも例の子に少し似てない?」 「「ねー」」 松原先生の愛人の話を生徒たちは面白がって話していた。 もし自分が……。になってしまったらそれでいいのか。 それに痴漢にあった時の表情に実は俺、勃起しました。 だって、可愛すぎだろ、ちょっと痴漢おっさんにナイスと思ってしまった、俺を許してください。 松原先生の愛人、気になる、というか震えてるならなおさら。 旧校舎ちょっと様子見で行くか。 --------------- 松原先生の愛人……って僕のこと? どうしよっそんな噂話。せっかくいい大学に入れてこのまま卒業したいのに 前の子は退学していった。 キリキリと胃が痛む。 がくっと膝が崩れ校門の淵にうずくまる。 はぁはぁ……。 歩いていく人に見られるが誰も声はかけなかった。 でも、 「どうしたの、具合悪い?」 顔をあげると知り合いが。 「棗?」 「なんだ、首席の渚だったか」 「……そうだよね、君が僕に話しかけてくるなんて地球が消滅しないかぎりありえないよね」 「ハハ、笑える」 お腹を抱えて笑っているのは同じ学年の同じ首席を狙ってる、東雲棗(しののめなつめ) 実をいうと田舎の実家近くの高校で1年だけ同じだった。 つかかってくるほどに僕のことを嫌ってる。 「ね、女の子に聞いた噂なんだけど、今回の松原先生のターゲットって渚なんでしょ」 !? 棗の顔が恐ろしく見えた。 「松原先生に君のこと紹介したの俺なんだよね」 「へ?」 キーンコーンカーンコーンと予鈴が鳴り響いた。 「あ、時間じゃあね」 「あ、ちょっまっ……」 うぐっと体が硬直してしまった。 ……。 何も考えるな。落ち着いて行動しよう。 1限の講義が終わり、2限昼休み、松原先生に声をかけられた。 「やぁ」 ごくりと唾を飲み込む、ここで走って逃げだせば秀ではなく、優にされる。 オール秀を目指しているのに僕にとっては耐え難い。

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