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翌日も終業時刻の直後に呼び出された。今日は3階の喫煙所で待っているという。まだ入社したばかりなのに人気のない場所をよく理解しているのでそれがまた末恐ろしい。小鳥遊の足取りは重たかった。また意味不明なお願いをされるのではないかと気が気ではない。一応今日も財布に5万を突っ込んできたが、岸本の言いなりになっている自分に笑いが込み上げてくる。
「今日は早いですね」
煙草をふかしながら岸本が言う。紫煙の薫る空気に息が詰まった。小鳥遊は非喫煙者で煙草の匂いが苦手だった。
「偉いですよね。毎回ちゃんと律儀に来て」
「おまえのせいだろう」
「それだけ皆には知られたくないことなんですね」
「……今日はなんだ」
早く済ませて帰ろうと思っているのがばれたのか、岸本はゆっくりと間を持たせる。
「最近仕事が忙しくてリラックスできてないんですよね」
「おまえの時間の使い方が下手だからだろう」
「誰かさんが期待してくれるおかげで家でも勉強してるんですけど」
それは意外だった。やはり仕事の方は真面目にやっているらしい。これは期待できるなと考えているとおもむろに岸本がベルトを外し始めた。
「だから舐めてくれます?」
「……っ馬鹿言うな。見たくもない」
ジーっとジッパーを下ろす音が聞こえて慌てて目を逸らすと、岸本が目の前に迫ってきた。やや身長差があるせいで小鳥遊は上を向かなくてはならない。
「拒否するなら社内メールで一斉送信しますけどいいんですか?」
スマホを片手に見せてくる。画面を見ると「小鳥遊部長は種無しのアルファです」という文字が打ってあった。宛先は社内の連絡網のメールアドレスだった。ヒヤリとして立ち尽くす。
なんて用意周到なやつなんだろう。
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