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「あ……やばいかも」  そう言うときゅううっと岸本の後ろが締まる。中が蠢き出し小鳥遊のものを搾り取るように収縮し始めた。それに耐え切れず小鳥遊は精を放つ。 「……っく」  どくどくと溢れるものが岸本の中を濡らしていく。それを味わうように岸本は恍惚とした笑みを浮かべた。 「顔真っ赤でしたよ。そんなに気持ちよかったですか?」  絶望感でベッドに突っ伏す小鳥遊に岸本はそう声をかけた。  やってしまった……俺は馬鹿か。  岸本を睨み上げ服を着直す。性欲に素直に従ってしまった自分に嫌悪感を覚えた。満足そうに四肢をベッドに投げ出している岸本を一瞥してから部屋を出て行った。 「夜道は気をつけてくださいね」  女に対して言うような言葉にさらにイラっとする。小鳥遊は無言で玄関のドアを閉めた。  家についてからも小鳥遊は自分の失態を悔いていた。なぜあんなことをしてしまったのだろう。何年もご無沙汰だったせいで気が緩んでしまったのだろうか。ベッドに横になり週明けを迎えるのが恐ろしくなってくる。はたして自分は普段と同じ顔で岸本と接することができるのだろうか。 「考えても仕方ないな……」  ふぅと重い息を吐く。悶々と考え込んでいたせいで、時計は深夜2時をまわったところだった。明日は昼過ぎからパーソナルジムの予約を取ってあった。それに間に合うように支度をしなければならない。  眠りにつく瞬間、岸本が名前を呼ぶ声が聞こえたような気がして小鳥遊は身震いした。

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