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37 ありえない事態です(side 岸本)R18
その日は1日俺の仕事は休みだった。明後日の新入社員研修会のために1日休みがずれたのだった。
社会人として良いスタートを切れている気がする。それもこれも部長のおかげだ。仕事のときにはたくさんの営業のテクニックを教えてくれるし、営業部の佐久間先輩や米原先輩、百田部長と横溝課長とも親交を深めるために飲みに誘ってくれる。
なんてできた上司だろう。そのおかげで、俺は自然体で仕事に取り組むことができていた。人間関係は良好で、少しづつだが仕事も覚えてきた。任されることも多くなり、自分に自信が出てきた矢先だった。それが起こったのは。
小鳥遊部長は普段通り出勤していってしまったから広いリビングには1人きり。大きなソファを独り占めできた喜びと、ひとりぼっちの部屋の物悲しさの両方が俺に襲いかかる。
そんなときは夕飯の献立でも考えるのがいい時間の潰し方になっていた。今日はベビーリーフやサニーサラダを入れたシーザーサラダにしよう。コーンスープとミネストローネ、どっちがいいかな。あと、鱈のムニエルなんかはどうだろう。魚と肉、野菜をバランスよく部長に食べて欲しいな。スーパーへ買い出しに行くためにメモ帳に必要な食材を書く。
午後2時をまわった頃、本屋で買ってきたレシピ本を眺めているとなんだか頭がじくじく痛む。ほやほやと身体が火照ってきたような気がして、体温計で熱を測ると38℃もあった。熱が出るのは久しぶりだった。ぞわりとする悪寒に手足がこわばる。
「まいったな」
病院に行くほどでもないが、一応常備薬を飲んでおこうと思って前に部長が教えてくれた棚に手を伸ばす。するとぐらりとめまいが襲ってきた。慌てて棚の縁に手をかける。視界がゆらゆらと揺れて気持ち悪い。そのままゆっくりと膝を抱えて座る。視界がぐるぐると回る。
どうしたんだろう、俺。
とりあえずベッドに行こうと思って壁に手をつきながら廊下を歩く。熱が上がっているのがわかった。心臓がありえないほどの速さで早鐘を打っている。普通の熱と何かが違うと思った。忌まわしいほど何度も経験してきたアレの前触れのようだと思いながら頭を振る。
そんなはずないよな。だって俺、小鳥遊部長と番になったんだから……。
自分に言い聞かせるように胸をそっと叩く。大丈夫、大丈夫と小声で呟いてどうにか落ち着こうとする。パニックになりそうな体を必死で抱きしめた。やっと寝室にたどり着き、倒れ込むようにベッドに身体を投げた。
ベッドに横になっているのに体が浮き上がってしまいそうなほどふらふらとする。ぎゅっと自分の身体を抱きしめ、毛布をかぶる。部長の匂いが染み付いた毛布に包まれると少し安心できた。
「あっ」
どくん、と一際大きく心臓が跳ね上がったかと思えばドッドッドッと小さく刻み込むようなリズムに変わる。それが苦しくて辛くて目尻から涙が溢れていった。心臓のあたりを手で押さえてなんとか深呼吸をしようとしても、繰り返すのは浅い息だけだった。
ほどなくして下半身にぶわっと熱が集まっていく。血の流れが下半身に集中して恐怖に震えた。
「っ」
触れてもいないのにそこは硬くなり始めていた。1分もしないうちにテントを張っている。スウェットの下から痛いほど張り詰めているそこを見て絶望する。
嘘、こんなことありえない。
「あっ」
尻の間が熱を帯びてぬるりとした液体が溢れてきたのを感じで涙が止まらなくなる。
ちくしょう。またあの地獄が始まるのか。
声にもならない声で嗚咽を上げる。発情期なんて自慰だけに集中できていいじゃんとベータの同級生から言われたことを思い出す。
いいわけない。こんな理性的じゃない行為。大嫌いだ。
ふつふつと沸騰していくような熱さに頭が働かなくなる。下半身の熱は解放を求めてずくんずくんと疼いている。前と後ろに手を伸ばしそうになるのを必死で耐えて強く自分の腕に噛みついた。2度と味わいたくなかった状態が再びやってくる。もう2度と来ないと安心していたから抑制剤を処方してもらうのをやめてしまった。だから手元に薬はない。絶望的な状況に心が引き裂かれていく。
自分の意思に反して体が動いてしまう。スウェットの上から昂りをやわやわと揉み込む。口を半開きにして感じている自分がひどく浅ましく見える。しゃくりあげながらボクサーパンツの中に手を入れた。直接の刺激に涙が溢れるほど感じてしまう。前を弄っていない方の手で後ろのひくついているところに触れた。ぬるりとした体液が手のひらを濡らす。ひくひくと収縮しているそこに指を突き立てた。一気に2本の指をいとも簡単に飲み込むそこは嬉しそうに締め付けている。
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