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39 偽りΩを楽にしてやりたい一心で R18

 胸騒ぎがして終業後にすぐ家に向かった。昔から小鳥遊は勘が鋭いところがあった。    俺の気のせいであってくれ……。  電車に揺られながら確認のために岸本にメールを送る。いつもは数分とたたず帰ってくるのに、30分経っても返事がない。  マンションの下に着くと胸のざわめきはさらに大きくなった。部屋に向かうのも早歩きになる。 「うっ」  玄関のドアを開けた瞬間、嗅ぎ慣れた匂いが鼻をついた。急いでドアを閉める。靴を揃えるのも忘れて匂いの濃い寝室に向かう。 「!」  目に飛び込んできた瞬間、カッと体が焼けるような痛みを覚えた。心音が早まりスラックスの股間部がきつくなる。小鳥遊は勃起していた。 「ぶ、ちょ……すみませ、俺……ベッドよごしちゃいました……」  ぐったりとベッドに横になる岸本を見て唖然とする。間違いない。この状態は発情期の何ものでもなかった。足の間が痛みを帯びてくる。今にも岸本に飛びつきたいのを必死で抑えた。しかしなぜ? 番の契約はしたはずなのに。  涙の溜まった瞳を潤ませて岸本が見上げてくる。その間も岸本は忙しなく手を動かしていた。苦しげに眉を顰めて自身を追い詰めている。その姿にツキンと胸が痛んだ。おそらく誰にも見せたくない姿のはずだ。  小鳥遊は自然と足がベッドに向かっていた。そのままゆっくりと岸本の体を抱きしめる。怖がらせないように優しく手を回した。 「あ……」  岸本が静かに息をのむ音が聞こえた。脱力するように体重を預けてくる。 「自分を責めるな。おまえはただ感じてるだけでいい」  オメガの|発情期《ヒート》はいかに短時間で熱を放出させられるかにかかっていると聞いたことがある。だから小鳥遊はスーツを脱ぎ捨て下着も脱いで岸本の体に覆い被さった。  ゆっくりとなるべく刺激を抑えるように岸本の服を脱がしていく。ぐしょぐしょに濡れてしまった服が肌に擦れるのか、小さく喘いでいる姿がひどく辛そうで胸が痛んだ。 「部長……」  悲しげな目がこちらを見上げている。何かの言葉を吐き出す前にその唇を塞いだ。 「ん……」  落ち着かせるようにゆっくりと首を傾けて長いキスをする。体の力を抜くように岸本の髪を軽く撫でた。するとゆっくりと目が垂れていく。少しずつ様子が落ち着いていく姿に胸を撫で下ろしながら岸本の耳元で囁く。 「どうしたら楽になる? 言ってみろ。なんでもしてやる」  岸本の首筋に軽くキスを落としながら聞く。些細な刺激にも敏感になってしまうのか体を小さく跳ねさせた。 「部長に抱きしめてもらいたいです」 「わかった」  ゆっくりと岸本を横抱きにする。ほっとしたのか岸本の体の力が完全に抜けた。腕の中でぐったりとしている姿を見るとその頬を撫でたくなる。柔らかい頬に指を這わせ優しく撫でてやれば気持ちよさそうに顔を緩ませた。その顔が生まれたばかりの子犬のようでついおでこにキスをしてしまう。岸本を早く楽にさせるためだと自分に言い聞かせながら胸に吸い付いた。 「あっ……」  短く喘いで腰をくねらせる岸本の昂りに手をかける。ゆっくりと上下に動かしてやれば数分とたたずに果ててしまった。しかしまだ痛いほど張り詰めてしまっている。後ろの孔から溢れ出る体液を潤滑油にして前を濡らすと気持ちよさそうに目を細めた。 「大丈夫だ。おまえは悪くない。今は純粋に感じてればいい」  こくんと小さく頷くと岸本がそっと囁いてきた。 「後ろに蓋をしてください。部長のものが欲しくてたまらないんです。お願いしてもいいですか?」  恥ずかしそうに目を伏せながら言葉を紡ぐ岸本が単純に可愛らしいと思ってしまった。なぜだろうと思いながら既に昂っている怒張を岸本の入り口にぐりぐりと押し当てる。体液がローション代わりになって痛みはなさそうだった。  慎重に腰を埋めていくと中のうねりが強まった。搾り取られそうな強さに腰が揺れる。それが感じるのは岸本は歯をきつく噛んでいた。血が出てしまいそうなほどきつく唇を結んでいるので、それを解すためにもう一度深いキスを落とす。ゆっくりと歯を開かせ縮こまっている舌を追いかける。ちゅくちゅくとした静かな水音が2人の間で生まれる。それに呼応するように小鳥遊は腰を揺らした。 「んっ……ふっ……あ」  強ばった岸本の体が緩んでいく。後ろだけは小鳥遊を離すまいとするように吸い付いてくる。中のしこりを押しつぶすように動けば岸本は高い声を上げて鳴く。 「はぁ……んんっ……」  岸本の手が小鳥遊の背中に回った。もう少し刺激が必要かと考えて小鳥遊は岸本を抱き寄せ体を反転させた。膝立ちになった岸本を後ろから突く。正常位では届かなかった奥に先端がぶつかるのを感じて小鳥遊も息をのんだ。発情期中にのみ開くオメガの子宮口の入り口に達しているのだとわかる。 「うあっ」  悲鳴のような嬌声を上げて岸本が背中をそらす。逃げようとする腰を押さえてぐっと奥まで押しつけた。きゅうきゅうと締めつけてくるそこに挟まれ正直鈍い痛みが走る。小鳥遊は吐息を漏らしながら岸本の体を追い立てていく。 「うっ……あっ……んあ」 「っく」  一際きつく締めつけられた瞬間、岸本の体がびくんと跳ねた。小鳥遊も耐えきれずに白濁を放つ。今まで開かれたことのない最奥を熱いものが濡らしていくのを岸本は感じていた。前からもびゅっととめどなく精液が溢れシーツを濡らしていく。するといつもはまだ続く快感が嘘のように消えていった。ぐったりと力なくベッドに突っ伏した岸本に小鳥遊はそっと手を回す。 「……生きてるか」 「まあ、死んではいません」  死にたい気分ですけど、と岸本が続ける。 「まだ辛いか」 「それが嘘みたいに消えたんです。自分でも不思議です」 「それならいい。今夜はゆっくり休んだほうがいい」  そういうと小鳥遊は岸本を抱きかかえてシャワーを浴びせた。体液で濡れた体を丁寧に清めていく。岸本はそんな小鳥遊を見て目を伏せた。  神様みたいにいい人だな、この人って。  湯船に浸かりながらぼんやりとそんなことを考えていると体を洗い終わった小鳥遊が湯船に入ってきた。やや広めのファミリータイプの風呂に浸かるが、180センチもあるガタイのいい男2人には狭く感じられる。膝を合わせる形で正面に向かい合った。ちゃぷんと湯船が揺れる音だけが浴室に響く。何か話さなきゃと思って岸本は口を開いた。

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