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「そんな状態で家に帰ったらもっと塞ぎ込むだろう」
「……それもそうですね」
そう呟くと身なりを整えて近づいてきた。岸本のペースに合わせて歩幅を合わせる。空に浮かぶ満月が2人を照らしていた。その光が岸本の顔を照らす。その横顔がひどく悲しげで小鳥遊は目を見張った。目の光は普段より薄まっていて、足取りも自信がなさそうだった。こんな岸本は見たことがない。
なんて悲しい顔をしているんだろう。
とぼとぼと歩く岸本のペースに合わせていると、小鳥遊の住むマンションが見えてきた。
「大丈夫か。あと少しだ」
「……はい。なんとか。シャワー貸してもらえますか?」
「ああ」
力なく歩く岸本をなんとか部屋に導く。玄関で靴を脱ぐのもやっとという感じだった。すぐさま浴室に案内してシャワーを浴びさせる。着替えとタオルを用意して洗濯カゴの中に入れておいた。
普段は他人に何かをするということがないのだが、何年か前に買って愛用しているコーヒーメーカーの電源を入れる。程なくして2杯分のコーヒーを用意できた。それをカップに注ぎダイニングテーブルの上に置く。
「シャワーありがとうございました」
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