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「小鳥遊部長にお願いがあるんですけど……」
覚悟を決めたような目で岸本はこちらを見つめてきた。その目は鋭い。小鳥遊は背筋を伸ばして話を聞くことにした。
俺にできることならなんでもやってやろう。こいつは仕事だけは光るものがあるし部下の手駒に欲しい。
「俺と番になってくれませんか?」
「っ」
その言葉に息をのんだ。きっと一生縁のないものだと思っていたから。小鳥遊は目を瞬かせる。
「部長と番になれば俺の発情期は理論上なくなって働きやすくなります。それに部長のためなら俺なんでもしますから……」
ガタっと椅子を引いてすぐ隣に立つ岸本の目は真剣そのもので、小鳥遊はなんと答えてやればいいかに迷う。岸本にとってはメリットが多いのだろう。俺は種のないアルファだから間違って行為に及んでも子どもはできない。それに職場の上司として身近にいる信頼できる大人が岸本には俺しかいないのだろう。目を潤ませてこちらを見つめてくる瞳をまともに見てしまったら、もう戻ってこれない場所に引きずり込まれそうだ。
「……俺にはどんなメリットがあるんだ」
意地の悪い質問だとは思う。だが聞いておかなければ検討することもできない。
「家事手伝いに仕事も精一杯取り組んで部長の評価を上げます。それと部長が望むなら性欲処理にでも使ってください……俺にはそれしかありませんから」
最後の言葉は尻すぼみになってはっきりとは聞こえなかった。予想していたよりも岸本の自己評価は低いらしい。それがもったいないと感じて小鳥遊は言葉を発した。
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