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 軽く息を吐いてから小鳥遊は目を閉じた。こいつとの出会いは最悪だったが、今はこうして冷静な話ができるまでになった。またいつ豹変するかわからないが、小鳥遊はこの岸本という男に振り回されるのも悪くないと思うようになっていた。 「わかった」  ほっとしたように岸本が微笑む。じゃあ早速と言わんばかりにうなじを見せてきた。 「どんなふうに噛まれたいとかあるのか」  一生に一度のことだからそこはなるべく希望に沿ってやりたかった。 「……あんまり考えたことないですね。部長はどんなふうに噛みたいですか?」  この間の一夜の過ちが鮮明によぎるが、首を振って頭をクリアにする。これでは体目当てと思われてしまう。 「特にない」 「じゃあ背中から抱きしめてください。それで十分です」 「わかった……」  言われた通り岸本の背中に回り込みゆっくりと両手をお腹にまわす。筋肉質な腹を撫でながらそっと首筋に舌を添わせた。ぴくんと岸本の広い肩が跳ねる。やや爪先立ちになってうなじに歯を当てがった。ゆっくりと慎重に歯を立てていく。 「っ」  痛そうに身を捩る岸本を力強く抱きしめうなじに噛み付いた。びくっと岸本の体が跳ねる。前にきつく回した手に岸本の手が重なった。唾液で濡れた首筋を軽くタオルで拭き取ってやる。赤々とした跡がくっきりと残った。 「部長ありがとうございます。今日のこと一生忘れません」  うなじをさすりながら岸本が笑う。その笑顔は初めて見せるとびっきりの笑みでつられてこちらも笑ってしまいそうになった。 「化膿しないようにガーゼを当てておいたほうがいい」  椅子に座らせて救急箱からガーゼとサージカルテープを取り出す。うなじを綺麗に覆うとくるりと岸本が振り返った。

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