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44 変わりもののΩ

 だから見放されることには慣れている。不完全な俺を、欠陥品の俺を欲してくれる物好きなんてこの世にはいないとそう思っていた。  だから夕日が当たるコンクリートの上で岸本がぽつりと呟いた言葉に耳を疑った。思わず岸本のほうを振り返ってしまうほどに。 「なんかあれですね。俺ショックだけど嬉しいんですよね」  照れたように頭をかく岸本をまじまじと見つめる。足を止めて立ち尽くした。 「どうしてだ。おまえは俺のせいでさらに苦しむことになるんだぞ」  すると岸本はふっと軽く笑いかけてきた。目尻を垂らして嬉しそうに、今にも尻尾を振りそうに。 「だってすごいじゃないですか。俺の体は小鳥遊部長の影響をもろに受けてるってことですもん。俺は部長の影響を受けられるのが嬉しいんです」  はにかみながら呟く岸本を小鳥遊は瞬きもせず見つめていた。  こいつは守とは違う。考え方も認知の仕方も全部違うんだ。同じオメガだというのに全く似ていない。 「なんで嬉しく思うんだ」  素直に気になったことを聞いてみると岸本は慌てて頭を振った。 「なんていうんでしょう。お互い干渉しあってるみたいな? その感覚が心地いいというか」  小鳥遊はそれを不思議そうに見つめる。「この話は終わり」と一声あげて岸本はこちらを見つめてくる。人懐っこい瞳と目があった。 「今日の晩ご飯は何が食いたいですか? そろそろ夏バテ対策しなきゃいけないですから、野菜の多い献立にしようと考えてるんですけど」  口を緩ませながら岸本が言う。小鳥遊は心の奥底から温かいものが溢れてくるような気がして急いで蓋をした。流れていってしまったらこの感情を忘れてしまいそうな気がして首を振る。 「おまえに任せる。荷物持ちなら手伝うぞ」 「ぜひお願いします。最近は野菜が安いですから買い置きしておきましょう」  行きつけのスーパーまで歩いて行く途中、岸本は軽くスキップをするように前を歩いて行く。成人男性がスキップなんてと最初は白い目で見ていたが、だんだんと散歩を喜ぶ犬のように見えて笑いが込み上げてきた。そうして自分は大型犬の散歩中で飼い主であることに気づき、ふ、と軽く笑みが浮かんだ。 「岸本、ありがとな」 「なんですか? 聞こえなかったんですけど」 にこにこと笑う岸本がこちらを振り返る。陽の光に照らされて爽やかで瑞々しい笑顔だ。 「いや、なんでもない」  教えてくださいよー、と迫ってくる岸本の肩を押してまっすぐ歩くように誘導する。分厚い雲の隙間から真っ青な空が顔をのぞかせていた。その空の下で2人の影が重なり合っていた。互いの存在を確認するかのように影は離れなかった。

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