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「えーっと、これはここに置いて」  冬物のロングコートは端っこに。薄手のコートは取りやすい手前に置く。靴下や下着の入った透明な3段ケースを拭いていると、クローゼットの床の1番隅に小さな紙袋が置いてあるのが見えた。何気なく手にとって中身を確認する。 「へぇ」  我ながらこういう勘は冴えてる方だとは思っていたけど的中するとは思わなかった。だってあの部長の部屋にこんなものは似合わないから。にやっと笑ってからもう一度クローゼットの中を見渡す。柔軟剤の匂いと部長の匂いがいっぱい詰まったそこは俺にとっては癒やしの場所でずっと閉じ込められていたいとさえ思う。  さぁ、今日はどんなふうにして遊んでやろうかな。  トマトと卵の中華和えと茄子の煮浸し、鮭の塩焼きを綺麗に平らげた部長を確認してから俺は気分が上がっていた。いつものルーティーン通り部長が風呂に入るのを確認して急いで紙袋をベッドの上に置く。上がってきたときにどんな顔をするか楽しみでしかたない。 「……なにしてる」 「ベッドメイキングですけど」 「そっちじゃない。その袋どこで見つけた」  焦ってる焦ってる。冷静そうな顔をしてるけど眉毛がぴくぴく動いてるんだよなぁ。 「クローゼットの掃除してたら出てきたんですよ。こういうの趣味なんですか?」  袋の中から半透明の筒型の大人のおもちゃが現れた。小鳥遊部長は動揺したように肩肘をぴくっと震わせた。  いいよその反応。思春期の男の子みたいで。 「部長も男の子ですもんね。このくらい普通ですよね」 「片づけろ」 「嫌です。こいつもだいぶご無沙汰みたいですし使ってあげなきゃかわいそうでしょう」

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