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71 【番外編】遅れてやってきたハロウィンに狼は戸惑います R18
「仮装しますか?」
10月のある日。岸本に今日の予定を確認し終えると、そんな言葉が返ってきた。
俺は仕事モードで岸本に応対する。家では気を張らずに話せるが、ここは職場だ。俺はわざと厳しい表情を浮かべた。
「ハロウィンのことか。うちの会社はお菓子を持ち寄る程度だが」
すると、岸本が妖しげな笑みを浮かべる。
「《《ここ》》でするわけないでしょう。あ、もしかしてそういうプレイがお望みですか?」
俺、頑張りますよ。と意味不明なことを小声で囁いてくる。幸い、俺と岸本の近くに人はいない。爆弾発言をしてくる部下に心底怯えていた。誰かに聞かれでもしたらどうするんだ。
「まあ、楽しみにしててくださいよ」
引っかかる言い方をして岸本が去っていく。俺はそれを訝しみながら眺めていた。
社内はささやかなハロウィンムードだった。俺も佐久間や米原にお菓子をもらった。佐久間からは無難なチョコバーで、米原は目玉のデザインの丸い飴玉だった。米原らしいなと思って苦笑する。
すると、帰宅してソファでくつろいでいた俺に後ろから声がかかる。
「がおーっ」
「……馬鹿が」
猫耳を頭につけた阿保面と相見える。がおーってなんだ。それはライオンじゃないのか。お前は猫の仮装をしてるんじゃないのか。
さまざまな疑問が頭の中を飛び回る。しかし、細かいことを気にしない岸本は四つん這いで床を這う。そして、俺の座る足の間にちょこんと座り込んできた。
「えへへ。びっくりしました?」
「お前の馬鹿さ加減に驚いていたところだ」
「意地悪だなぁ……まぁそんなところも嫌いじゃないけど」
そして俺の股間に頬を擦り付けてきた。やめろ……今は分が悪い。
「いわゆる、疲れマラってやつですね」
「っ」
ここ何日か自己処理ができていなかった。そのせいか、岸本の顔が近くにあるというだけで熱を持ってしまう。いや、岸本の顔に欲情しているわけじゃない、絶対に。
「あ、勃ちました?」
「……黙れ」
今はほんとに間が悪い。俺は張り詰めたそこに意識がいってしまう。一人暮らしならば1人で抜いていた。だがしかし、今は岸本がいる。
「じゃあ部長のチョコバーいただきますね」
あーん、と口を開けて舐める仕草をする。いつもは大型犬に見えるが、今日は猫耳のせいか猫っぽい感じがして妙に緊張してしまう。
岸本は俺のスウェットのズボンを下ろすと、下着越しに昂ったものをよしよしと撫でてくる。その動きがこそばゆくて、俺は軽く身を捩らせる。
「……今日はやけに素直なんですね」
暴れないなんて珍しい、と口にして岸本が俺の下着に手をかける。それはぺち、と音を立てて岸本の頬をぶった。それに興奮したのか岸本が頬を上気させる。目は獲物を捉えた猫のように鋭い。
「逃げたら噛みますから」
そんな脅しの言葉とともに岸本が俺のものを飲み込んでいく。ちろちろと猫のようにざらついた舌が俺を刺激する。
たっぷりと濡れた口内で扱かれ、正直頭を押さえつけてやりたいくらい気持ちいい。しかし、俺はあえて岸本に身を任せる。
「……この遅漏がっ」
顎が疲れ出したのかそんな悲鳴をあげる岸本を見て、にやりと笑ってしまう。そうなのだ。俺はそんなに早く果てるほうではない。
岸本のエロい仕草が見える特等席だと俺は思う。だから、俺のものから口を離して息を荒げる後頭部をそっと撫でた。ぴく、と岸本が反応する。
「大きい猫だな」
さわさわと前髪を撫でてやれば、ごろごろと喉を鳴らして俺の膝に頬を乗せてくる。たまには猫化した岸本を見るのも一興だな。
そのあとは存分に岸本の顎を疲労させて、欲しがりな猫に構ってやった。
岸本は寝る時まで猫耳をつけていたので、頭が痛むだろうと思いそっと外してやる。ハロウィンなんて特別なイベントではなかったのに。こいつといると、全てが違う。華やかな催しはさらに華やかに。岸本は俺の知らないことで俺を満たしてくれる。
こんな日がいつまでも続けばいい。そんなささやかな願いを胸に目を閉じた。
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