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くすくすとテーブルから笑い声が漏れてくる。俺も面白そうだなと思って資料を眺めていた。社会人は夏休みがない分、こうした旅行で息抜きをするのかと学びにもなった。
「班決めはこっちで勝手に決めたから、自分が誰と一緒に寝るのか確認しとけー。どっちが酒の介抱するのかも決めておけよ」
次第にがやがやと盛り上がる社員たちの円の中に百田先輩が入っていく。常に円の中心にいて周りに人が集まってくるタイプ。それと比べて小鳥遊部長は一匹狼のようだった。部長のまわりには誰も近づこうとしない。みんな一定の距離を保っている。近寄り難い空気がぷんぷん匂う。けれど俺はそんな小鳥遊部長が良いと思う。上司には2つのタイプの人が必要だと感じているから。百田先輩のような親しみのある人と、小鳥遊部長のような威厳のある人。その2人がうまくバランスをとっているから部署内がうまくまわる。それを俺は肌で感じ始めていた。
夏季研修の説明会が終わって俺は自分のデスクに戻っていった。どんな服装で行こうかなとか、どんな食事になるのかなと思いながらわくわくしていると部長がじっと俺を見つめているのに気づいた。鋭い眼光で何かを見極めるように見てくる。少し気まずくなって体を背けた。どうしたというんだろう。
俺は食事担当になった。家で自炊をしていますと答えたら、百田先輩に決まり! と肩を叩かれてしまった。でも自分の特技でみんなを喜ばすことができるなら嫌な気はしない。
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