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「うっ」
急な胸の痛みにその場に膝から崩れ落ちる。はぁはぁと荒い息を繰り返して酸素を貪った。胸がツキンツキンと痛み始める。その場に倒れ込んでしまった。芝生が顔に当たってちくちくする。
「ふっ……うっ」
だんだんと息が浅くなる。苦しい。胸が痛い。なにより体が燃えるように熱い。今までの発情期の比じゃない。ポケットから抑制剤の入った小瓶を取り出す。震える手でキャップを開けた。ぶわっと炎に飲まれたかのような熱さに体が痙攣し始める。飲酒後の抑制剤の使用は避けてくださいと言われているものの、今飲まなければ確実に襲われてしまう。もうあんな思いはしたくなかった。抑制剤を手のひらに置いてなんとか口に入れようとした。そのとき誰かの足音が地面の振動で伝わってきた。
やばい。ヤられる。
なんとか逃げ出そうと言うことをきかない手足を動かす。地面を這いつくばって木陰の方に向かっていった。月の光が青白く野原を照らす。
すると誰かに勢いよく体を抱き起こされた。
ああ、この匂い安心する。
俺は全身の力を抜いて横抱きにされた。揺れる視界の中で彼の黒髪が夜風に靡いている。そのまま森の中に進んでいくのをぼんやりと眺めていた。20分ほど歩いているとある場所で足が止まる。そこはログハウスのようだった。逞しい腕で俺のことを抱き寄せたかと思ったら、彼の指は部屋の電気をつけるためにスイッチに触れる。長く綺麗な指をしていると思いながら部屋の中のベッドに下ろされた。
「……意識はあるな」
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