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課長は颯爽と食堂から出て行ってしまう。取り残された2人は同時にため息をついた。横溝課長の無茶振り具合は年々ひどくなっているような気がする。
しかし仕事は仕事なので昼食を済ませた2人は横溝課長のデスクに向かった。よほど急いでいたのだろう。資料が乱雑に散らばっている。岸本はそれを整理しながら上司の顔を仰ぎ見る。すでに仕事モードに入った小鳥遊の顔をまじまじと見つめた。
やっぱりかっこいいんだよなぁ。
意見交換は午後2時からの予定だったので、タクシーを呼びつけ直接オフィスに向かうことにした。ひとつのビルの上から下までリブハウスのフロアになっているらしい。規模でいえばスバルホームズより大きい。コマーシャルの数も多くユニークなそれは業界でも評判がいい。
なんでも長年社長の席をがんとして譲らなかった元社長に代わって息子の若社長が就任してからというもの、新しい試みを取り入れているらしく社内は目まぐるしく変わっているのだという。
「岸本おまえは俺の後ろでただ見てればいい。余計な口は挟むなよ」
凛とした顔で小鳥遊が言うのを岸本はゆっくりと頷いて聞いた。手汗がじわりと滲む。こんな大事なときに発情期が来てしまったらどうなってしまうのだろうという不安からだった。スーツのポケットには抑制剤の入った袋を詰めてある。この薬の出番がなければいいが。
「行くぞ」
タクシーを降りて堂々とそびえ立つ9階建てのビルの真下に立つ。上空ではびゅうびゅうと風が吹いている。小鳥遊のあとに続いて岸本もエントランスに足を踏み入れた。まず2人を出迎えたのはアメリカで人気を博しているある画家の絵だった。壁一面に同じ画家の絵が何枚もかけられている。画廊のようだと思いながら受付の男性社員に声をかける。
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