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 天海恭平は地上28階のレストランで相手を待っていた。この日を心待ちにしすぎて30分も早く着いてしまったことに自ら笑う。  それほどまでに運命の番と出会えたことが嬉しいのだ。  天海の恋愛歴は多難の連続だった。リブハウスの御曹司として完璧な環境で育てられた彼は、まさしく完璧な男になった。地位も名誉も加えて容姿端麗である。しかし、恋愛だけは下手だった。  初めて付き合った相手は、大学生の頃に付き合った。御曹司という名前目当ての同級生のオメガだった。初めての相手とあって簡単に騙されてしまった。  2度目の相手は父親が紹介してきたオメガの男性社員だった。リブハウスの総支配人の彼は御曹司の天海に劣らない色男だった。しかし、互いの価値観の違いから一年で破局した。  3度目の相手はネットの掲示板で知り合った本名も知らないオメガの青年だった。テレビ番組などで顔が知られているせいか、すぐにバレてしまい金目的にされた。  天海が絶対の信頼を置いているのは、リブハウスでは父親と秘書の綿貫だけだった。綿貫とは幼稚園からの幼馴染である。アルファとオメガという相容れない2人だったが、趣味が似ていて性格も似ていため恋愛関係に進展することもなく仕事に取り組めている。  綿貫のことを秘書に推したのは天海だった。頑固な父親が社長の席を譲ったすぐ後で、天海は自分に秘書をつけた。2度と他人に騙されることがないようにという予防線が綿貫だった。不思議と綿貫の人を見る目は正確で、それに何度も救われてきた。現在のリブハウスがあるのは綿貫のおかげといっても過言ではないと言えるほど、天海は綿貫を信用していた。

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