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「俺以外誰も見ていないんだから、がっついていいよ」
「すみません。じゃあお言葉に甘えて……」
がつがつと皿の料理を平らげる岸本を見て天海は満足そうだった。テーブルマナーをきちんと守って品のいい食べ方をする天海を、岸本はすごいなと思う。自分とは住む世界が違う人だとも感じた。
「ごちそうさまでした」
「こちらこそ。ごちそうさま。君が美味しく食べるのを見るだけで嬉しいよ」
ナプキンで口元を拭いながら天海が言う。なんて甘い言葉だろう、と岸本は黙って聞いていた。全身で好きだと言われているような。真っ直ぐで、嘘偽りのない好意に岸本の緊張の糸もほどけていく。
「じゃあさっそく本題といこうか」
「はい」
話があって呼んだ、と天海から聞いている。岸本は何を聞かれるんだろうと思って膝の上で握った拳を開いたり閉じたりした。次に天海が口にした言葉に、岸本は目を見開いて驚く。
「子供は何人欲しい?」
「え?」
「俺は3人がいいと思ってる。一人っ子より兄弟がいたほうが協調性が育まれると思うから」
俺は一人っ子で我が強く育ってしまったから、と恥ずかしそうに頭をかく天海を岸本はどう受け止めていいかに迷う。
この人、本気で俺と付き合う気なんだ。
まだ付き合ってもいない相手から、子供の話をされるのは不思議な気分だった。だから、自分なりに考えて言葉を発する。
「俺はまだ子供とか想像できないんですけど、心優しい芯のある子に育ってくれたら嬉しいです」
「そうか。俺も同じ気持ちだよ」
ふぅ、と天海は息を吐くと今度は腕を組んで聞いてきた。
「家はマンションがいい? やっぱりファミリーで暮らすなら戸建てかな?」
また未来の話を振られる。岸本はやや間を開けてから口を開いた。
「実家が戸建てなので、戸建てだと安心しますね……」
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