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 天海さんは静かに口を開いた。 「今夜は部屋を取ってある。2人で酒でも飲んで話さないか?」 「はい」  珍しい夜の誘いだった。お酒はいつも天海さん行きつけのバーで飲んでいたから。2人きりで飲むのは初めてだった。  天海さんの後ろに続いて案内された部屋に入る。スイートの部屋だった。部屋の端にはガラス張りの浴室があってジャグジーが付いていた。部屋の中央にある猫足の丸テーブルにはシャンパンが置いてある。  天海さんは俺に座るように促すと、グラスにシャンパンを注いでくれた。しゅわしゅわと弾ける泡に目がいく。相当高価なものなんだろうなと思う。 「乾杯」  カチンとグラスを合わせてから、少しシャンパンを口に含む。 「美味いです」 「だろう? 2本目も用意してもらってあるから、遠慮せずに飲んで」 「ありがとうございます」  2人で談笑しながらシャンパンを飲み干す。いつのまにか2本目に突入していた。酒に弱い俺はすでに酔っ払っていた。天海さんは酒に強いのか全く酔う気配がない。 「もうそろそろお開きにしようか」 「……はい」  飲みすぎてしまったかもしれない。でも、気分はいいし意識も明瞭だ。天海さんと酒を飲むようになってから、少しは耐性がついたのだろうか。 「眠い?」 「まだ大丈夫です」  そう、と呟くと俺の視界がぐるりと回った。世界が一回転したみたいだった。とさっとベッドの上におろされる。 「っ」  気づけば天海さんにキスをされていた。何度も啄むようなキスの雨が降る。デートの帰り際にいつも優しくキスをしてくれたが、今日は一度では終わらない。

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