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「んっ」
唇をノックするような動きに合わせて、俺も口を開いた。ぬるり、と口内に侵入してきた舌は熱くて溶けそうだ。俺の息継ぎを待つようにゆっくりと舌を舐めてくる。数十秒すると、やっと口を離してくれた。
「いきなりでごめんね。あまりにも可愛くて止められなかった」
少し照れたように笑う天海さんを見て、そんなところも魅力的だと思う。
「俺も嬉しいです」
素直に言葉を放つと、今度はぐっと身体を抱き寄せられる。俺より数センチ背の高い天海さんの腕の中に閉じ込められた。この腕の中は安心する。自分の心が、身体がほどけていくのがわかる。
そのままベッドに押し倒され、深いキスを味わう。いつまでそうしていただろうか。天海さんが俺のワイシャツに手をかけてくる。俺はされるがまま、じっと天海さんの目を見つめていた。
それからお互い服を脱ぎ去って絡み合う。お互いの唾液が、顎を流れてシーツを濡らした。俺はもっと近くに天海さんを感じたくて腕を背中に回す。少し驚いたように目を見張ると、天海さんは俺の頭を優しく撫でてくれた。あまりの気持ちよさに目がとろんと揺れる。
「嫌じゃない?」
今更何をいうんだろう。いいに決まっている。
俺はこくんと頷き、天海さんのものを自身の濡れたところへ導こうとした。しかしーー。
「?」
天海さんの切先が秘部に当たるところで、身体が固まってしまう。
嫌だ。挿れて欲しくない……。
反射的に天海さんの身体を押してしまった。
「岸本くん?」
こちらを気遣うような天海さんの視線が辛い。
「泣いているのかい?」
「え?」
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