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「お前のほうはどうなんだ。天海とは上手くいっているのか」
「昨日、別れました」
何? 耳を疑うような台詞に足が止まる。
「なぜた岸本……天海は運命の番じゃなかったのか?」
「あの人は間違いなく俺の運命の番でしたよ」
と、岸本は淡々と話す。もう既に整理がついていることらしい。しかし、納得がいかないのは小鳥遊の方だった。
「天海とならきっとお前の理想の人生が歩めたはずだ」
「もう、いいんです」
それよりも、と岸本は口を開く。
「小鳥遊部長は綿貫さんと上手くいったんですか?」
「いや……興味がわかなかった」
口籠もりながら答えると、岸本が少し笑うのが雰囲気でわかった。
「お互いダメでしたね」
「……ああ」
もともと、運命の番というものを信じていなかった俺には、痛くも痒くもない話だった。
前で動いていた影が止まる。小鳥遊もならうように足を止めた。沈黙が数秒。
「俺、小鳥遊部長のこと最初は嫌いだったんです」
突然の告白を始めた岸本の背中を見つめる。相変わらず姿勢が綺麗だ。堂々としている。逞しい容姿はアルファにしか見えない。
「怖くて、気難しい人で、優しくなくて。俺だけ新人研修の内容も違いましたし、戸惑いました」
小鳥遊はじっと岸本の言葉に耳を傾けた。そう思っていたのか。全く気づかなかった。
「それから色々あって同居して……この前家を追い出されて……なんかもう全部夢みたいなんです。俺みたいなやつが他人と同居するとか、ありえないことなんです」
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