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「部長?」
小鳥遊のことをただ黙って見ていた岸本が声をかけてくる。小鳥遊はこの後どのようにすればいいか迷っていた。このまま押し倒して抱いてしまいたい気持ちと、それでは身体目当てだと思われてしまわないかという懸念とがないまぜになる。
「っおい」
ちゅ、と岸本が小鳥遊の指をおもむろに吸ってきた。はしたない音を立てて小鳥遊の指をどんどん口内に飲み込んでいく。次第に甘噛みをするようになってきて、小鳥遊は自分の身体が熱を持つのをはっきりと感じた。
「部長……早く俺を抱いてください」
岸本なりの精一杯の一言なのだろう。目元が微かに震えている。綺麗なまつ毛が小刻みに揺れていた。小鳥遊はそれを合図に岸本のワイシャツに手をかけた。ボタンをあえてゆっくり外していく。岸本は脱ぎやすい様にと身体を起こした。自ら剥ぐ様に服を脱ぎ去る。小鳥遊もベルトを外してスラックスを下ろした。お互い生まれたままの姿で向き合う。
「岸本」
期待に満ちた眼差しでこちらを見る岸本と目が合う。とくん、と心臓がゆるやかに跳ね上がった。手を掴み、ベッドに縫い付ける。ベッドの上で2人の影がたゆたう。
「小鳥遊部長っ」
小鳥遊に揺さぶられながら、岸本は想い人の名前を呼ぶ。小鳥遊はその声に胸が締め付けられた。下から突かれる度に、岸本は心の奥底が満たされていくのを感じた。
小鳥遊の触れた先からぴりりとした熱を生む。それが岸本の体のあちこちを支配していく。その感覚がたまらなく愛おしい。そう思っているのは岸本だけではないようで、小鳥遊も頬を上気させて岸本に触れる。
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