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言い訳じみているかもしれないが、毎日一緒にいれば、何時出会ったとか、記念日とか。そういうの全部ひっくるめて大事だけど、照れくさくて祝うのもどうかとしり込みしてしまうのが俺の性格だ。
「お前は祝いたかったか?」
申し訳なさそうに聞いてみる。すると、
「もちろん! それに、一昨日は小鳥遊さんが疲れたって言うからえっちもできてないです」
むすっ。としたわがまま小僧の顔が出た。岸本と1年暮らすようになって、こいつがどれだけ表情豊かなのかわかるようになった。一昨日は残業が長くて、シャワーを浴びたらそのままベッドに突っ伏してしまった気がする。
「すまない……なにかで埋め合わせをさせてくれ」
「じゃあ、今からシましょう」
「……まだ飯も食ってないだろ」
「嫌です。俺は今がいいんです」
やると決めたら曲げない性格の岸本だ。俺は踏ん切りをつけて、岸本の手のひらを小突く。
「わかった。なら、体をどけろ」
「俺が抱っこして連れてきますから、小鳥遊さんは力抜いてていいですよ」
「は?」
ひょい、と俺の身体が浮いた。赤子が母親に抱っこされてるみたいな姿勢に、思わず恥じらいが出てくる。腰に回された手は力強く、それでいて優しい。岸本の腕の筋肉に見入っていると、「そんなに見つめられると照れます」と言いつつもまんざらではなさそうな瞳と目が合った。
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