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「今日は、どうされたい?」  岸本の耳元で、息を吹きかけてそう聞く。撮りたいと言い出したのは岸本のはずなのに、照れているらしい。か細い声でこうつぶやいた。 「めちゃくちゃに、してください」 「……わかった」  俺は岸本の中に自身を押し込む。抵抗なく受け入れられたことがわかって、ほっとする。岸本の身体を傷つけるのだけは避けたかった。 「あ"っ」  下からの突き上げに、岸本は四肢を投げ出して震える。中にも震えが伝わってくる。俺は、今すぐにでも果てる自信はあったが、岸本をさらなる快感まで高めてやりたくて息を飲む。 「んん……」  岸本の腰に手を添えて、後ろから抱え込むようにして抱く。肩甲骨が綺麗に波形を作っている。それを覆う健康的な肌にキスを落として。なにも抱くことだけが、愛情の伝え方ではないとわかってはいるけれど。直に伝えられるのは、これが1番だとそう思っていた。俺はもう、撮られていることなんか頭になくて。ただ、岸本を気持ちよくさせたい一心で身体を動かす。 「ぶちょ……う。きす、してくらさい」 「っ」  不意に、岸本が後ろを振り返り。舌足らずな言葉で俺を見つめた。その顔が、欲情にまみれた人間の顔そのもので興奮した。嬌声を上げる岸本の口に蓋をしてやる。こうしてやれば、岸本の声は俺の口だけに響く。声さえも、俺のものになる。

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