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第12話 カート解放まで、あと3週間

「鍵咲さん、開発日誌のPV数、えぐいことになってますよ……!」  プロモーション部の朝田が興奮した表情で言うのを聞いて、颯太は気恥ずかしいような、誇らしいような気持ちになった。 「いやぁ、最初はどうなるかと思いましたけど、すごいアクセス数ですよ。UU数もいい感じで推移してますし、問い合わせのメールや要望メールなんかもきてます。想定以上です」 「結果が出たなら良かった。ホッとしました」 「これ書いてるのって、鍵咲さんですよね? ライティングの才能、あるんじゃないですか? 予約カートの解放まであと三週間ありますけど、数字も期待できると思いますよ」 「ありがとう。先方に、好評だと伝えておきます」  苦労して藍沢と取り組んできた甲斐があった、と颯太は報われる想いだった。本当は藍沢がレポに関わっていることを明らかにしたかったが、万が一のことを考えると言える状態ではないことが残念だ。  自分の体験を文字にしているため、かなり感情的な部分を差っ引いているはずだが、颯太の気持ちに食いつくようにレポへの食いつきがいいのかもしれない。  とにかく、あと三週間で、カートが開く。 「それで、次なんですけど、少し過激なプレイを織り交ぜて欲しいっていう要望がきてて……」  嬉しそうに朝田が話す中、颯太はふと、出張中の藍沢のことを考えた。藍沢は仕事中に私用を混ぜるタイプではなかったが、何の心境の変化か、出張先のホテルに戻ったあとなどに、時々メッセージをくれるようになっていた。  もしかすると自分たちは、このまま距離を縮めてゆくことができるのかもしれない。颯太と同じとまではいかなくとも、藍沢も似たような気持ちになってくれている気がした。  恋かどうかはまだわからない。でも、もし、この気持ちを藍沢に伝えたら、今の藍沢ならどう返すだろう。それが時々、無性に知りたくなる。  藍沢はなぜここまでしてくれるのだろうか。  本音を聞きたかった。 「……鍵咲さん?」  朝田の声に、考え事をしていた颯太は、はっと我に返った。 「あっ、ごめん! 大丈夫です……!」  朝田のこちらを伺う視線に、慌てた颯太は反射的に相槌を打った。すると、朝田は要望書を手渡し、安堵した表情になった。 「良かった……。うちとしても、本格的なSMになりそうだったら守備範囲外かなという意見もあったんですが、これぐらいの要望なら、大丈夫だろうということになって。じゃ、これで進めてもらえますか? お願いします」 「はい」  本格的なSM、という言葉が引っかかったが、頷いてしまった颯太は、その内容を読んで固まることになったのだった。

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