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第20話 裏切り者は涙を流さない(1)(*)

「あなたのパートナーは、初心なところが大変可愛らしいですね?」 「ええ」  野々原の弾んだ声を否定もせずに、藍沢は噛みつきそうな目でねめつけた。 「鍵咲さん」  粗相をしてしまった颯太は、ついに嗚咽を漏らした。 「ぅ……ひく……っ、ぅ、ぅ……っ」  恥ずかしくて顔を上げることができない。颯太ががくりと脱力すると、藍沢は指先で、先ほどまで野々原に弄られていた乳首を揉むように摘まんだ。 「もぅ……っ、むり……っ、藍沢くん……っ」 「まだでしょ。まだ快楽堕ちが残ってます」 「ぅ、ぅぅ……っ」 「この機会を逃したら、次はないでしょう? ちゃんとどうなるか体験しておかないと、レポが書けなくなっちゃいます」  藍沢は、涎を垂らしたまま涙を流す颯太の頤を拭い、熱のこもった声で颯太を諭した。  それから、先ほどから弄っていた乳首を指の腹で押し潰す。 「ここ、どうですか? こうした方が好き? それとも、こっちがいいですか?」 「ぁっ……ぁ、……ぁぁ……っ」  藍沢の声に絶望しながら、それでも両手で胸の突起を弄られれば感じてしまう。颯太が身をよじるたびに、挿入されたディルドがいい場所をぐりぐりと刺激し、射精したすぐあとだというのに、再び欲望が溜まりはじめる。 「感じる? 気持ちいい?」  言ってくれないとわからないですよ、と囁かれ、半ば飛んでしまいそうな恐怖を抱えたまま、颯太は哀願する。 「お願……っ、もう、も、もう……っ」 「もう? 何ですか?」 「いじわる……しな、しない、で……っ」  視界はもうぼやけて、藍沢をちゃんと確認できない。ただ、過剰にされることが、こんなにつらくて悦いだなんて、知らなかった。 「鍵咲さん……」  藍沢の名を呼ぶ声に、甘い熱が滲む。 「どんなに否定しても、あなたの身体は俺に反応する……。俺が、必要だと思いませんか?」  そんなに颯太に途中で切られるのが、屈辱だったのだろうか。藍沢にとっては遊戯なのかもしれないが、颯太にとって、これはもう既に仕事の範疇を超えていた。

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