62 / 70
第31話 「いっぱい困ってください」(1)
意識が飛ぶようなセックスを、二回繰り返したところまでは覚えていた。
でも、折り返し地点を過ぎたあたりからの記憶は怪しくて、何を口走ったのかもあまり覚えていない。
「颯太さん……、颯太さん……?」
気づくと藍沢が少し不安そうな表情で覗き込んでいた。
「あ……?」
「飛んじゃいましたね。身体、嫌なとこないですか……?」
「へ……? あ、ん……」
「すみません、ちょっとコントロールが効かなくなってしまって。一応、我慢したんですけど」
言われて、颯太は身体が清拭されていることに気づいた。後孔には違和感が残っていたが、関節を動かしても、骨も筋も筋肉も、ちょっと使いすぎてヘタっている以外は問題がなさそうだった。
「おれ、は、だいじょぶ」
「よかった……」
藍沢が焦りを孕んだ声で言うほど、余裕がなかったのかと思うと、何だか少し可笑しくなった。
「壊してよかったのに」
へろっとそんなことを言ったら、藍沢は颯太を叱った。
「そういうところ」
「ん?」
「あなたの駄目なとこです。本気にしますよ。本気にして本当にして、後悔してからじゃ遅いのに」
本音だったのだけれど、颯太は「ごめん」と返すにとどめた。藍沢は、やっぱり、颯太をなるべく大事にしてくれようとする。そんな藍沢の気持ちに、茶々を入れるようなことはしたくなかった。
「……最後の、すごかった……」
「ああ」
あまりに激しい交わりが続いたためか、記憶がごっそり抜け落ちていた。でも、意識が飛ぶ直前に最奧らしき場所に藍沢の先端が嵌まったのが、びっくりするほど悦くて、颯太は少し困った。思い出しただけで肌が粟立つ。
「あれ、何? ちょっと、あんまりされると、怖いんだけど」
「結腸まで、届いたんです。俺のが。初めて、ですよね」
「けっちょ……う?」
「ええ。簡単に言うと、直腸の奥んとこです」
藍沢もさすがに疲れたのか、雑な説明をして、そっと颯太の頬に口づけた。
ともだちにシェアしよう!