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第3話 前立腺(2)(*)

「あ、ああ、あああ……っ」  内壁がわななき、藍沢の指を締めつける。  未開の奥を、藍沢は、上下左右に壁を押し広げながら、少しずつ犯してゆく。入る余地などないと思っていた壁をぐにぐにと指で開拓され、知らない間にびくびくと腹筋が痙攣し出した。 「ひぅ、っ──……!」  次の瞬間、颯太は声もなく達していた。 「あ、ぅ、はぁっ、は……っ、ん、んんっ……、ふ、ぅ……っ」  快楽の名残りに脳裏が真っ白になり、全身に入っていた力がどっと抜けると、汗まみれの身体が芯から冷えてゆく。 「あ……っ、ご、ごめ……」  やってしまった、という罪悪感に身の置きどころがなくなった。いく時に、せめて一声かけるべきだったかもしれないし、もっと我慢した方が良かったのかもしれない。初めて経験した絶頂の激しさに、狼狽した颯太の背後で、藍沢がぽつりと呟く。 「……感度良すぎでしょ」  どうしよう。  やらかした。  颯太は完全にそう思った。  淫乱でどうしようもない奴だと思われただろうか。  それとも、マナーもルールも知らない奴だと呆れられただろうか。  どちらも同じぐらい立ちいかないと思った次の瞬間、藍沢は考え込むように言葉を継いだ。 「その……反応がいいので少し驚きました。敏感なのはいいことです。開発し甲斐があるっていうか……あ、変な意味じゃなく、いろいろレポにも書けるじゃないですか。多様なニーズに寄り添える。伸び代ありますよ、鍵咲さん」  物は言いようとはまさにこのことだと思ったが、少なくとも表面上は、藍沢が引いたわけではないことに、颯太は胸をなでおろした。  そっと中指が抜かれる時、思わず名残惜しげに締め付けてしまう。それでも藍沢は、颯太の反応を揶揄するようなことは、一言も口にしなかった。  どころか、電子レンジで温めたおしぼりを持ってきてくれながら、「俺の指、気持ち悪くなかったですか……?」と確認してくる。颯太はその率直さに、少し心を打たれた。 「いや。大丈夫。驚いたけど、平気だよ」  藍沢の細やかな心遣いが、むしろくすぐったくなるぐらいだ。 「まさかこんなにいいとは思わなくて、びっくりした」  笑い話にしてしまおうとして、くにゃりと笑うと、藍沢はホッとしたような顔をした。  せっかく藍沢に手伝ってもらっているのだ。レポ用のデータを可及的速やかに取るべきだと颯太は思った。 「まだいけると思う。できれば、今夜中にひとつはクリアしておきたい」 「じゃ、次……玩具、入れてみましょうか?」  そういうことになった。

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