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第6話 ディルド(2)(*)

「ここ、です。ここ。覚えて。鍵咲さん」 「んっ、んぅ、う、うぅ……っ」  藍沢に上半身を預けて向き合い、抱きかかえられて颯太は喘いでいた。初日こそ後背位で顔を見られることはなかったが、今日は互いの顔が近くに寄せられた状態で、藍沢の右手が颯太の背後に回り、ディルドを出し入れする颯太の手を支えていた。  ディルドは、太さが三段階あるうちの初心者用で、大人の親指一本強ぐらいの細身のタイプだが、根本にピンポン球ぐらいの径のリングが付いており、リングに指を通し、好きなようにディルドを出し入れできる。二人で使用することを前提に考えられたもので、根本まで飲み込んだとしても、リングが安全弁となり、それ以上奥に入らない仕組みになっていた。  その細身のディルドが、颯太の前立腺を掻いて、出入りしている。 「ん、んんぅ……っ」  どくどくと下半身に血が集中しはじめ、藍沢の声を耳元で聴きながら、颯太は呻いた。ディルドを出し入れされるたびに、熱というにはあまりにも淫靡な衝動が、身体の髄をじわじわと侵食しはじめる。  まだ、半分ぐらいしか入っていない。  なのに、腹の中に異物があるのが、こんなに苦しい。 「あ、いざ、わく……っ、おれ、お、おれ……っ」  颯太はどこかが壊れてしまいそうな危機感に襲われ、藍沢に縋った。 「痛くない? 痛くないなら、怖がらないで」  静かなトーンで促され、じゅぽぽ、と挿入りかけたディルドが抜けかける。それが亀頭を模した丸い先端を残し、抜かれたあとで、ぬぷぷ、とまた挿れられると、叫び出したくなるような愉悦に見舞われる。 「ん、い、いいっ……、どう、しよ、こんな……っ」  指に感じるのなら、きっとまだ理解もできた。でも、玩具にこんなに感じるなんて。戻れなくなりそうで、自然、腰が引けるが、藍沢はそんな颯太をゆっくりとあやしていった。 「あ、あっ……んんっ……!」  藍沢に手伝ってもらっている、とはいえだ。 (誰かと、するのが、こんなに……)  再びアナルプラグでは届かなかった場所を抉られると、背中が震え、自然、玩具を締め付けた。 (っこんなに、気持ち良いだなんて……っ) 「はぁ、あっ、で……る、っ……! で、ちゃ……ぁ、あっ……! あぁぁっ……!」  藍沢の腕の中でもがきながら、颯太は腰を振ってディルドを締め付け、絶頂した。  達してから、思いっきり藍沢のシャツに白濁をかけてしまったことに気づいて、青くなる。 「ごめ……っ、クリーニング……」 「ああ、大丈夫です。着替えならありますし、なんなら洗濯機回してもいいし」  藍沢は言い、ラブホに洗濯乾燥機があることを示す。 「でも……」 「これ形状記憶シャツなんで、普通に丸洗いできますから」  そういう問題じゃない気がしたが、藍沢は颯太の汗にまみれた額の髪を指先でそっと梳くと、シャワーを勧め、自分はさっさと裸になった。

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