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第7話 アナルパール・バイブ機能付き(2)

「わかった。頑張る」 「いや、あんまり頑張らない方が、俺としてはいいんですが……」 「え、何で?」  藍沢の独り言を拾ってしまい、問うと、何と答えたものか、少し困った気配を漂わせた。 「本当は、ペニスの入る位置の平均ぐらいまで入れるんでしょうけれど、いきなりそれやると、鍵咲さん、飛んじゃいそうだし……。それに一応、処女でしょ?」 「え、う……ん」  玩具を入れること自体、初体験ではある。  しかし当然のごとく生身の人間とも経験がないことがバレていたことに、颯太は頬を染めながら頷いた。  玩具を使うようになって、自分では届かない場所をこする快感に目覚めつつある。だが、何度か独りで試してみた結果、藍沢とする時のように、いい気持ちにはなれなかった。藍沢の提示した「パートナーでの使用感」が大事なことを、身を持って颯太は思い知っている。 「初めては取っておきたいんじゃないかと思って。本気でやれば、きっと結腸まで届きますけど、全部入れたら玩具が初めてってことになるの、嫌じゃないですか?」  仕事とはいえ、味気ないことではあった。が、今のところ誰かとする予定もないし、藍沢ほど颯太を大事に思いやってくれる相手に、これから先、果たして巡り逢えるのだろうか。颯太は自問した。 「……きみにされるなら、いいかな」 「え」  刹那、藍沢がぎょっとした表情になった。  颯太はぽつりと出てしまった言葉に、慌てて両手を挙げて首を振った。 「ああ、ちが……っ! 違う! そんな目で見てるわけじゃなくて……! ほらっ、上手いから! 藍沢くんなら信用できるって意味! したいわけじゃないから……!」 「……そうですか」 「ご、ごめん。何か、その」  颯太は自分の迂闊さを呪った。これで藍沢に距離を取られたりしたら、最悪だ。  しかし、藍沢は颯太の主張に、ただ頷いた。 「大丈夫です。わかってますから。……それに、鍵咲さんに上手いって言われるのは、お世辞でも嬉しいです」  顔が全然嬉しそうではなかったが、藍沢の性格を少しずつ把握しはじめた颯太は、きっと照れてるんだろうな、と思った。 「お世辞じゃないよ。実際、きみ、よく見てるなって思うし。安心してこうして実験できるのは、半分以上藍沢くんのおかげだよ」  颯太が駄目押しすると、藍沢は器用に耳だけを赤くして俯いた。 (あ、笑った……) 「ありがとうございます。……そろそろ、しましょうか」  突然の笑みに心を奪われた颯太は、「うん、よろしく」と藍沢に向かい、身体を預けた。

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