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第2話 緑、みどり、ミドリ

「櫻川くーん。こっちだー!」 「はーい! 今行きます」  土の中をえっさほいさと進む。ここは農家の渡辺の畑だ。ふくらはぎまで隠れる長靴は、やっぱり重くて思ったように身動きが取れない。 「いやぁ。朝っぱらから悪かったね」 「いいえ。大丈夫です。それで、奴はどうなりました?」 「もう暴れるのなんのって。さっき、猟友会の人達に引き渡したよ。まだウリボーだから別の山に返しに行くってさ」  莉良はそれを聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。畑にある人参を掘り起こした主は、無事に山に送還されたらしい。渡辺はやれやれというように、被っていた競馬デザインの帽子を被り直した。 「櫻川くんには、手続きだけ済ませてもらおうと思ってさ。書類、うちに上がって書いてきなよ。茶菓子もあるしさ」 「ほんとうですか? じゃあ、お言葉に甘えて上がらせていただきます」  それから、渡辺宅で熱いお茶と最中やゼリーをもらって、談笑する。莉良は害獣駆除の報告書を書きながら、熱いお茶をすすった。お茶の葉は、この村ーー梶山村(かじやまむら)の特産物だった。1口目は渋みが来るが、ついで甘みが強く口の中がそれでいっぱいになる。莉良はこの村に来てから、ここのお茶が大好きになった。仕事中に携帯している水筒にも、これと同じ種類のお茶が入っている。  のんびりと田舎の空気を味わっていると、渡辺がそういえばと話を変えた。 「村おこしのほうはどうなってるんだっけ? リーダー、たしか櫻川くんだったよね?」

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