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第3話 村おこしのために背に腹はかえられぬ

「櫻川くん。ちょっと」 「はい。橋口村長」  職員室の廊下に連れ出される。珍しいなと思っていると、村長は言いづらそうに頭をがしがしとかいた。 「村おこしのことなんだけど……あれからどうかな? そろそろなにかいい案は出たかい?」 「すみません。それがまだ……」 「そうかぁ。困ったなあ」  村長はゆっくりと言葉を選ぶようにして話す。 「うちの村は岩手県に属してるでしょ? 先月の合同議会で、厳しく言われちゃったんだよなぁ。県から村おこしの予算を年に50万円もらってるでしょ。このままだとそれが、取りやめになっちゃうみたいなんだよねえ」  ちら、と村長が莉良の顔をうかがう。莉良は、心臓がひゅっと冷えるのを感じた。気持ちもどんよりと沈んでいく。 「すみません。実現可能な案を3日以内に出して報告します」  村長は、うーんと両腕を組んだあとで、何度か頷いた。 「わかった。じゃあ、よろしく頼むよ。この村の未来は櫻川くんにかかっているといっても過言じゃないからね」  そう言って、煙草を吸いに行ってしまった。村長は仕事が停滞すると決まって煙草を吸いに行く。  莉良は申し訳なさと自分の不甲斐なさに、はぁと深くため息をこぼした。  家に帰って1人になると、いよいよ頭を抱えてしまった。1年も考えつくしたのに、これといった案がないなんて。自分はなんて力不足なんだろう。  莉良はパソコンで『村おこし 方法』と調べた。  この1年、何度もこのワードで検索しているが予算を考えるとどれも実現不可能だ。そもそも県だってたいして期待をしていないんだ。国から補助金が出ているから、それを名目上、梶山村に渡しているだけ。本気で梶山村の村おこしを県が主体的にやろうという姿勢は残念ながら莉良たち村役場職員には伝わってこない。  自分の村のことは自分でなんとかしろ、という県からの圧を感じる。  時計の針が夜中の1時を指したところで、莉良は目を擦った。とにかく、なんとかしなければ。  そう思って、頭の中に思いつくだけのワードをとことん検索していく。『村おこし エージェント』とわけのわからない言葉を検索したところで、我に返った。が、気になる文言を見つけて食い入るように見つめる。 《人材派遣会社 ウェルム   様々なスキルを持つ社員を派遣し、みなさまの問題を解決していきます。  ご相談は以下の無料質問チャットまで。》 「もうこれに頼るしかないっ」  莉良はカタカタとキーボードを叩く。チャットは24時間運営しているらしく、数分もせずに返事が来た。村おこしを手伝って欲しい旨を伝えると、社員の1人を紹介された。 『はじめまして。ウェルムの派遣社員の|宗方《むなかた》と申します。  櫻川様のお力になるべく誠心誠意つとめさせていただきます。まずは、梶山村に訪問し問題の根本を見つけていきたいと思っております。  ご都合のつく日を教えて頂けましたら、こちらから伺いますので訪問日時を教えていただけると幸いです』  変な業者とかじゃないよな?   莉良は何度も本社情報をチェックする。うん、本社の住所は丸の内だし、実績もあるみたいだから大丈夫だろう。変な会社だったら突き返せばいいだけだし。そう思って、訪問日時を返信してパソコンを閉じる。疲労がどっと押し寄せてくる。疲労が3キロくらい身体にまとわりついている気がする。枕に顔を押し付けた。柔軟剤の香りが、ふわりと鼻をついた。

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