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第4話

 2週間後、梶山村からの返答が来た。20代の若手職員を探していたからという理由で、書類選考は合格したという。そして、電話で面接日を決めた。ぜひ、梶山村まで足を運んで欲しいという熱心な申し出により莉良は村に行くことになった。莉良の実家から、新幹線で2時間、バスで30分のところにある村だった。 「ほんとに、緑しかない……」  莉良は目の前に広がる田畑や、山に目を奪われた。緑、みどり、ミドリ。5月という時期もあるからか、桜は葉桜に、野花はのびのびと咲いていて、生命の力強さを感じた。そうして、土のいい匂い。莉良はすっかりこの村が好きになった。 「はい。じゃあ来週からよろしく」 「へ?」  面接で軽く自己紹介をした後の返答だった。村長だという年配の男性が、がははと豪快に笑う。 「半年間募集してくる子を待ってて1度も来なかったんだ。そんな大ピンチのときに君がきた。真面目そうだし、なにより笑顔がいいから採用することに決めたよ」  それからは風のごとく。両親には猛反対されたが、初めての一人暮らし、田舎暮らしをすることになった。はじめは慣れない日々が続いてホームシックになりかけたが、村長の橋口をはじめ村役場の職員たちは優しく見守ってくれた。そのおかげか、梶山村に住み着いて1年になる。この村の四季を見れたことで、莉良は去年よりこの村のことが好きになっていた。

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