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第5話

「櫻川くん。ちょっと」 「はい。橋口村長」  職員室の廊下に連れ出される。珍しいなと思っていると、村長は言いづらそうに頭をがしがしとかいた。 「村おこしのことなんだけど……あれからどうかな? そろそろなにかいい案は出たかい?」 「すみません。それがまだ……」 「そうかぁ。困ったなあ」  村長はゆっくりと言葉を選ぶようにして話す。 「うちの村は〇△県に属してるでしょ? 先月の合同議会で、厳しく言われちゃったんだよなぁ。県から村おこしの予算を年に50万円もらってるでしょ。このままだとそれが、取りやめになっちゃうみたいなんだよねえ」  ちら、と村長が莉良の顔をうかがう。莉良は、心臓がひゅっと冷えるのを感じた。 「すみません。実現可能な3日以内に案を出して報告します」  村長は、うーんと両腕を組んだあとで、何度か頷いた。 「わかった。じゃあ、よろしく頼むよ。この村の未来は櫻川くんにかかっているといっても過言じゃないからね」  そう言って、煙草を吸いに行ってしまった。村長は仕事が停滞すると決まって煙草を吸いに行く。莉良は申し訳なさと自分の不甲斐なさに、はぁとため息をこぼした。  家に帰って1人になると、いよいよ頭を抱えてしまった。1年も考えつくしたのに、これといった案がないなんて。自分はなんて力不足なんだろう。莉良はパソコンで『村おこし 方法』と調べた。この1年、何度もこのワードで検索しているが予算を考えるとどれも実現不可能だ。そもそも県だってたいして期待をしていないんだ。国から補助金が出ているから、それを梶山村に渡しているだけ。

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