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第7話 ウェルムの人

 梶山村には、山道を抜けてきたところにちょっとした休憩所がある。そこは村の入口になっていた。「ようこそ 梶山村へ」と書かれた、白いところどころ錆の目立つ看板が立っている。その隣にちょこんと建つ木造の小屋が休憩所だった。といっても、特に何かがあるわけでもない。赤いプラスチックのベンチが1つ置いてあるだけだ。  チャットでやりとりをして、宗方が梶山村に来る日が決まった。それが今日だ。莉良は自分の方から最寄り駅(といっても、片道2時間かかる)まで村役場の車で迎えに行こうと提案したが、宗方は自家用車で来るのだという。運転に自信があるんだな。莉良はそう思った。こんな山奥に自家用車できたら、きっととんでもなくビビるだろう。崖あり、山あり、小川あり。莉良だって、運転するのは冷や汗ものだ。村の人達は焦る様子もなく車を運転するけど。  5月の初風が心地いい。莉良は休憩所の外で大きく伸びをした。田舎の時計は、都会と進み具合は同じはずなのにやけにゆっくりと感じられる。それが、莉良のおきにいりだった。 「あれかな……」  約束の時間ちょうどに、舗装されていない道から白い車が見えてきた。最初は点に近かったものが、だんだんと大きく車の形を帯びてくる。近づくにつれ、莉良はあれ? と首を傾げた。なんか、都内でもめったに見られない高級車みたいな。あれって、ランボルギーニ!? ドアが翼みたいに開くやつ? 眼前まで迫り来る白いランボルギーニに目が釘付けになる。運転手はよっぽどの車好きか、金に余裕がある人なのか。莉良は、内心戸惑っていたがそれを悟られないように普通の顔をした。

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