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第10話

「ではさっそくですが、梶山村の村おこしについて櫻川様のご意見をうかがえますか?」  宗方はパソコンを起動し、莉良の目を見据えた。眼力が強い。莉良は直に目を合わせるのが怖くて、宗方のおでこのあたりを見つめることにした。 「自分が提案したのはカフェの設立です」 「カフェですね。具体的にはどんな?」  カタカタ、とキーボードを打ち込む音。なんだか、聞き取り調査みたいで緊張する。莉良は何度も構想したカフェ設立のイメージを宗方に伝える。 「梶山村には、築100年を超える空き家がいくつかあるんです。明治時代の面影を残している建物なので、リノベーションしてカフェにすれば昨今のレトロブームに乗れると思うんです」  ほう、と宗方がひとつ息を吐く。莉良は押せ押せと言わんばかりにプレゼンをする。 「この村の特産品であるお茶の葉を使って、緑茶やレモンティーなどを作って売ってみたいんです。ネット通販も始めれば、現地に来なくても購入することは可能ですし。それと、カフェ経営が成功したら、今度は近くに旅館を建てたいと思っています。最終的には、梶山村への移住者を募るためにカフェ経営の利益から助成金を出して、移住者1世帯につき10万円ほど配る予定です」  宗方は、莉良の非現実的な妄想を最後まで黙って聞いてくれた。莉良は熱弁しすぎてしまったせいか、体が熱い。作業着の上着を脱ぐことにした。 「現在の村おこしの予算額は、いくらくらいですか?」  1番、答えにくい質問だった。莉良はここはもう正直に言うしかないと腹を決める。 「50万円ほどです。なので、予算的に無理だろうって自分の案は通りませんでした」  なるほど、と宗方が頷く。

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