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第11話

「だいたいのイメージは掴めました。となると、重要なのは予算のほうですが」  宗方はあまり表情が豊かな方ではない。けれど、このときは目の奥がぎらりと光ったように見えた。 「櫻川様の案ならば、最低でも2000万……理想に近づけるなら5000万円は必要でしょう」 「なっ、に、にせんまん!?」  桁が違うではないか。莉良は座っていたパイプ椅子から転げ落ちそうになった。そんなお金どこからわいてくるって言うんだ。やっぱり、自分の案は突拍子もなくて非現実的なんだな。そう落ち込もうとしていると、宗方が「くく」と声を発した。手で口を隠すようにして。笑っているのだろうか。 「いや、すみません。動きが漫画のキャラクターのようだったので……」 「はあ」  この人の笑いのツボはよくわからない。こほんと、息をすると宗方は先程とはうってかわって真剣な顔になった。 「わたしの会社ウェルムは業界でもトップクラスのスキルを持った人材を派遣する会社です。そこでわたしは、ネットマーケティングを任されています」 「ねっと、まーけてぃんぐ?」  聞き慣れない言葉に首を傾げていると、宗方がゆっくりと滑舌よく話し出す。 「はい。過去の事例として、政治活動をなされている方の場合は、支援サイトで支援金を募ったり、アマチュアのブロガーをマーケティングしてプロにまで指導したことがあります」 「そうなんですね。すごいです」  政治家にブロガーか。どれも莉良とはだいぶかけ離れた存在だ。 「カフェ設立のためのお金をどう集めるか。わたしの中でプランは決まりました」 「えっ。こんな短時間で?」  莉良は期待に満ちた眼差しで宗方を見上げる。座っていても、そもそも座高が違うのだ。見上げなければ顔は見えない。

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