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第13話
「それは別にいいですけど……。具体的には、何をやるんですか?」
真剣に聞いているというのに、宗方はふっと意味ありげに笑うだけで答えようとはしてくれない。
「この手のものは、本人には意識させない方がファンに受けるんですよ」
なんだかよくわからないことを言っている。莉良は、そうですかと空返事をした。
宗方がおもむろにパソコンの画面を伏せる。音もなく立ち上がると、スマホを取り出した。
「はい、笑ってください」
「え」
宗方は無機質な声で、そう言い放つ。莉良は、きょとんとした顔でカメラに目をやった。カシャ、と乾いた音が耳につく。
「あ、の。えっと……?」
カシャ、カシャと無機質な音。宗方は、莉良の周りをくるくると回りながら撮影をしている。
なんで、写真撮られてるんだろう。俺。カフェ設立のためのプランを考えるんじゃなかったのか? そう考えている間も、宗方はカシャカシャと何枚も写真を撮っている。
「あのう、宗方さん。これは一体?」
「いいから。笑いましょう。はい、布団が吹っ飛んだー」
宗方が言う駄洒落自体は面白くはないけど、宗方が言うからこそ面白いと感じるのかもしれない。え、えへ。と宗方のペースにつられて我ながら気持ち悪い笑みを浮かべてみる。きっとほっぺた引きつってる。最近、笑うこともなかったしな。忙しすぎて。表情筋、死んでるわ、これ。
「まあ、こんなものですかね」
その後、5分程して宗方がスマホを腰ポケットに収める。写真を撮られるのも久しぶりで、他人に笑顔を見せるのも久しぶりで。莉良はどっと疲れを感じた。
「櫻川さんは、役場のホームページに顔出ししてますよね」
「はい。そうですけど。といっても、職員の集合写真の端っこにですが」
「わかりました。では、今日はこれでお開きにしましょう」
えっ? と莉良は声を上げそうになった。まだ、写真しか撮ってない。カフェの構想の話をするんじゃなかったのか?
「わたしはこれから色々とやることがあるので。では、また明日」
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