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第15話

「宗方さんっ!!」  宗方の泊まっている旅館は、定食屋を営む二階建ての建物の1部屋だ。昨日、村に滞在する場所を聞いていたため、女将さんに受付で呼び出してもらったのだ。 「おはようございます。櫻川様」  寝癖ひとつない。完全フル装備の宗方がやってきた。ぴしりとワイシャツのネクタイを締めた宗方に詰め寄る。顔には、なんですかと書いてある。なんですかとはこっちの台詞だ。 「なんですか、あの写真!」 「ああ。見たんですね。宣伝材料ですよ。初投稿は、初々しいくらいがちょうどいいんです」  「それに」と宗方は言葉を続ける。ペラッターのプロフィール画面を見せてきた。ユーザーネームは莉良。フォロワーが150人。たったの一晩で? これが多いのか少ないのかはわからないが、莉良のリア友より多いのは確かだ。 「あんなの……盗撮でしょう」  莉良はわなわなと怒りに震えて宗方に言う。すると、宗方はくすと唇を引き上げた。昨日よりも深い笑み。だから、この人こんな顔もするんだと思って。莉良は、怒りがふっと消えていくのを感じた。 「村役場のホームページに写真があると聞いたので、ネットに上げても良いだろうと判断しました。先に言うと反対されそうだったので」 「一言、相談してもらえれば……」  と言いかけて、どうなっていただろうかと考える。小心者の莉良は、きっと猛反対していただろう。自分に自信がなくて、ネットなんて怖くて。よくわからないものに触れるのは嫌で。不安で。  押し黙った莉良を見て、宗方はこう言った。 「何事も、挑戦してみなければわかりませんよ。それに、櫻川様が本気で村おこしをしたいのなら、顔と名前は見せるのがマナーではないですか」  宗方の言葉は正論そのもので。莉良はぐ、と言葉に詰まる。

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