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第16話

 たしかに、宗方の言う通りかもしれない。本気で梶山村を有名にさせたいのなら、莉良は梶山村の顔であり、名刺だ。しり込みなど、している余裕はない。莉良は、まっすぐ宗方を見つめた。 「わかりました。今回の件は許します。自分も、考えが甘かったと反省しています」 「ならよかったです。これから、色々と写真を撮っていきますがお気になさらず。梶山村の村おこしのプロジェクトリーダーの勇姿を載せたいだけですので。それと、ネットアイドルとしての莉良くんを育てていくためですからね。そこのところ、忘れないようにしてください」  「それとですね」と、宗方は目を細めて言う。 「櫻川様の容姿は強みなんです。都内を歩いていれば、芸能会社からスカウトが来てもおかしくはありません。無自覚なのが、いいところでもありますが」  芸能会社? おだてられても、なにも出せない。莉良は、納得できないまま宗方を見た。視線が合うと、宗方は手を組んだ。 「あなた、テレビとか見ないでしょう。テレビに出ている芸能人と比べてみてください。その容姿を持っていれば、なんでも手に入るかもしれないのに」  宗方が、1歩距離を詰めてきた。すかさず莉良は、1歩後ろに下がる。この距離は、だめだ。なんとなく、良くない気がする。 「わたしは、わたしにできることをして村おこしを成功させるつもりです。気に食わないことがあれば、また教えてください」  そう言うと、スマホを持ってどこかに電話をかけ始めた。莉良はその場で待つのも邪魔になるだろうと思って、村役場に戻ることにした。

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