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第21話 真実がわかるまで追いかけたい
宗方が梶山村を去ってから1週間が過ぎようとしていた。莉良はその間、家の中から1歩も出れないでいた。
橋口村長からは『村おこしプロジェクトの資金調達ができて、ほっとして身体が休息を求めているんだよ。2週間休むといい』と心配してくれた。
受付の中野からは『きなこくんの餌や猫砂など、ご自宅のアパートの玄関先に置いておきました。良かったら使ってください。櫻川さんはここ数ヶ月ずっと村おこしのために尽力されていました。村人も皆、櫻川さんの勇姿を見守ってきました。今は無理をせずゆっくり休んでください』そんなメールを送ってくれた。
「皆、優しい人たちばかりだ……」
宗方がいなくなったショックで1週間も寝込んでしまうなんて。自分の心身の変化に驚いていたのは紛れもなく莉良本人だった。
周りの人からのサポートを受け、あと1週間しっかり休んで仕事に行こうと決意した時だった。
「んなぅ」
「あ、きなこ。一緒にお昼寝する?」
「んにゃう」
すりすりときなこが莉良のほっぺに身体を押し付けてくる。そうして、ごろにゃんとお腹を見せて触れアピールをしてきた。きなこのお腹まわりは、保護した日からすっかり膨らみ少しふくよかな体型になっていた。ガリガリよりはいいかと親バカ満載でおやつをあげすぎてしまったようだ。少し調整しないと、ともふもふのお腹を撫でた。
ふと、こんな時宗方だったらどうしていただろうと考える。きなこがふくよかになる前に、餌やおやつのあげすぎを莉良に注意してくれたかもしれない。宗方には人を導く力がある。
今思えば、コーチングのような指導方法だった。けれど、威圧感はなく淡々としている。感情が見えなくて最初はAIみたいな人だと思っていたけど、だんだん固かった表情が和らいでいくのを見た時、なぜか胸が弾んだ。あの気持ちは一体何だったんだろう。その答えを莉良は今でも探している。
「よし。決めた。宗方さんに会いに行こう」
その日の夜、荷造りを済ませた莉良は急遽中野に電話をした。きなこを1週間預かってもらうためだ。中野は快く引き受けてくれた。
明日の朝1番に村を出て、バスに乗り、新幹線に乗る予定だ。チケットはなんとかキャンセル分で空きが出たので取ることができた。
スマホで開いた会社のホームページを何度も見つめる。
『株式会社ウェルム 本社所在地 東京都新宿区△△町 マリンビル10階』
「明日はまず、ここに行けば宗方さんの居場所が掴めるかもしれない」
莉良の長い旅のはじまりだった。
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