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第11話

「口づけが好きだな、ディラ」 「うん……好きだ」 「気持ちいいか?」 「すごく」 赤くなった唇で とろんとした表情で 何度もねだってくるディラは可愛くて扇情的だ グリフは惜しみなく何度でも口づけを重ねる 「愛してるよ、ディラ」 「……うむ」 「口づけは、愛を伝える手段なんだ」 「そうなのか」 「ああ……だから、ディラも俺にしてくれ」 寝台の上に胡坐をかいてグリフがディラに口づけをねだる 目を閉じてちょっと笑いながら催促すると ディラは胡坐に乗りかかるようにグリフに抱きついて その唇を押し当てる 音を立てて吸いついては不満げに眉をしかめる 「……グリフのようにうまくできない」 「俺はディラの口づけが好きだ」 「……私は、愛が足りないんだろうか」 「伝えることに慣れてないだけだ。したいだろう?」 「口づけか?したい」 「自覚してくれ。それは俺を愛してるってことだ」 「……そうなのか?」 「ああ。もう一度してくれ。きっとさっきよりうまくできる」 グリフの腕がディラの腰を引き寄せる 唇が重なって ディラが唇に舌を這わせるとグリフが笑いながらそれを絡め取る 「もっとだ、ディラ」 「ん……」 何も知らずに後宮に咲いていた花 摘み取ったのはグリフォード 真っ白に輝く花弁を甘く淫靡な色に変えて 愛を香らせてみせよう 口づけでこんなに夢中になるのなら 身体を重ねて愛を注げばきっとディラは…… 「ん……グリフ……」 「なんだ」 「おなかが空いた……」 ……うん、そうだね このままなだれこんでしまおうと思っていたグリフは 自分の下心を恥じた 何も知らないのだ、ディラは 口づけで身体が昂揚してそれをお互いにぶつけ合うなど まだ彼には尚早なのだ そういう気分にさえさせられないのは 決して自分のテクが稚拙だからじゃないっ 「……行こう。夕餉が冷めるな」 「ああ。いつも一緒に食事が出来るのか?」 「いや……駐屯所へ泊まることも多いから」 「そう……一人で食べるのは、実は少し苦手なのだ」 「すまん。寂しい思いをさせるな」 「仕事なのだから、気に病むことはない」 「でも、ディラにそんな思いをさせるのは不本意だ」 「……愛してるから、か?」 「そうだよ。ディラを愛してるからだ」 「そうか。よし、今ので耐えられそうだ!」 きらきらーんっ そんな音が聞こえた気がした 食堂へ向かう廊下で ディラはグリフの腕にぶら下がるように抱きついて見上げ ものすごく嬉しそうに笑顔を溢した きゅぅーんっ そんな音も聞こえた気がした 骨抜きとはこういうことかと グリフはフラフラとした足取りで夕餉に向かった

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