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第13話

緊急招集の原因は王宮内での小火だった 幸い発見が早く火の回りも遅かったので 外れにある小屋の外壁を焦がしただけで消火された グリフが駐屯所へ着いた頃には 夜勤で詰めていた隊員らが対処しすべては完了していた 「犯人は?」 「確保済みです」 「引き渡したのか?」 「まだです。お話になりますか?」 「いや、いい。ご苦労だった」 動機はミラ新国王への反旗 玉座の主が変わってからこういったことは頻発している 前国王陛下がまだご健在だからということと ミラ国王陛下が長子ではないことが原因だ 国民に不安を与えないように できる限り早く芽を潰し 極秘に処理を完了させることが鉄則となっている 「三人組だったな。まだ仲間がいるかもしれん。警戒しろ」 「了解です」 犯人は警察へ引き渡される この国の国民だからだ 他国の人間の諜報活動や攻撃に対しては 管轄の軍部にその裁量権があるけれど 国民の場合は捕縛後の取り扱いは警察に変わる 犯人の捜索となると連携して追い詰めることになるけれど 今回は早々に捕まえているのだから あとは報告だけで済む 迅速に解決した部下を褒めて労ってやらねばいけない 部下からの報告を聞き それらを書類にしている間に夜は更けていった 「隊長、将軍がお呼びです」 「ああ」 グリフは大事に至らなかったことに安堵しながら 将軍のいる首都警護部隊本部へ向かった 事態の収拾にてこずっている時の呼び出しは憂鬱だけれど 今夜は胸を張って報告できそうだ 「娶ったらしいな、後宮に咲いていた白皙の花を」 「……いえ。まだ」 「そうなのか?第一隊隊長グリフォードともあろう男が、何をこまねいているんだ」 「……将軍、今夜の事件の詳細をご報告申し上げます」 「要らん。もう聞いた」 えー!! じゃあ、呼ばないでよ! もちろん上司にそんなことが言えるわけはないので グリフォードは顔が引きつらないように尻の穴に力を入れて直立した そんな彼を 何故か勢ぞろいしているほかの隊の四人の隊長がニヤニヤしながら見ている 将軍はどっかりと鎮座し自宅で寛いでいるかのような雰囲気を出している 「グリフォードののろ気が聞けるかと思って、みなを呼んだのだぞ」 もー!! 変なこと、しないでよ! 当然こんなことも言えるわけがない グリフォードはたまりかねて小さく息を吐いた こんな夜更けに自分ののろ気を聞くために集まってくる同僚たちが理解できない 「……将軍、ならびに隊長殿たち。噂はお聞き及びかと存じますが」 「お!洗いざらい喋れ!!」 「……前国王陛下に後宮でお仕えしていたマディーラという男が、本日、私の元へ参りました」 「よ!幸せ者!果報者!」 「……実は、幼い頃に首都に保護された時からの縁があり、こうなった次第です」 「運命ってやつか!!」 「一応、その、結婚を視野に、愛を確かめ合っていく予定……なのですが、いかんせんずっと離れて暮らしておりましたので、娶ったということは、事実ではありません」 「く~!焦らすねぇ!!」 「いずれ婚儀の際には改めてご報告申し上げますので、今しばらくご静観いただければ」 「なーんだよ、もったいぶってんじゃねぇぞ!」 俺だって今すぐ嫁にしたいさ!! そう叫ぶのをグリフは必死で堪えた 能天気な外野たちめ 将軍は頬杖をつきながらグリフのしどろもどろで漠然とした報告を聞いていた 隊長連中は酔っているとしか思えない気配で 妙な合いの手を入れては爆笑している 「ふむ。承知した」 「は」 「よいものだなぁ。若い連中の色恋沙汰や愛情のもつれは」 「……は」 「あり余る愛情を、惜しげもなく分けているグリフォードも頼もしいものだが」 「恐れ入ります」 「結構可愛いところもあるから、私の愛でも押し付けてやろうかと狙っていたりもしたが」 「滅相もないお話です」 「そうかそうか、身を固めるか」 「……いずれ、折を見て」 だからさー聞いて! 今ちょっと手間取ってるって言ってんじゃん! 「まあよい。初夜に呼び出して悪いことをしたな」 グリフはもう反論する元気もなかった 黙したまま項垂れる どうやら解放してもらえそうだ 「家へ戻るか?」 「……いえ。警戒中ですので、駐屯所へ詰めます」 「よし。ならばここにいろ」 「は?」 「警戒は隊員が努めるのだろう。ここで酒の肴になれ」 「……家へ戻ります」 「もう遅い」 グリフは自分の失言を心底後悔し 最初からコレをしようと集まったのだなと呆れた まさか青の閃光弾は……まさかな 「グリフォードの、愛に満ちた人生に」 将軍の音頭を皮切りに 大柄な男だけ六人の宴は朝陽が高く昇り切るまで続いた

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