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第16話
愛しい男を腕に抱いて
不埒な衝動に身を任せる事もなく
グリフはしっかり眠って朝陽を感じて目を覚ました
身じろぎをしながら腕の中を見ると
ディラがぱちりと目を開けこちらをみつめて横たわっていた
自分の両方の手のひらを合わせて頬の下に敷くという
この世で最も確実に相手を萌えさせる姿勢で
「ディラ」
「おお、起きたか。グリフはよく寝るな」
「すまん」
「謝る事はない。仕事で疲れていたのだろう」
「ん……そうだな……」
「おはよう、グリフ。朝の口づけをくれ」
グリフはふふふと笑うディラの額に軽く唇を落とした
本当はもっとねっとりじっくり濃厚なやつを一発カマしたかったけれど
朝だ
寝起きだ
しかも全裸
これ以上は無理
「……それだけか?」
「愛している、ディラ。少しは俺を好きになってくれたか?」
「好きだぞ。愛は、その、あると思うんだが……」
「責めてるんじゃない。ゆっくり自覚してくれ」
「うむ……自覚したら、もっとたくさん口づけしてくれるか?」
「あなたが望むなら、いつでもどこにでも好きなだけ。条件などないよ」
「……では、もう少しだけ、深いのが欲しい」
「今か?」
「今がいい。グリフが起きるまで待ってたんだもん……」
寝起きで全裸で当然朝勃ちしてますが何か!?
つーかこの股間の勢いは朝だからとかいう言い訳は通じん!
臨戦態勢に入ります、各自警戒せよ!!
いざ、出動!!
グリフはディラの上に覆いかぶさって
腕やら肩やら背中やらを撫で回しながら
ディラの期待に応えた
どさくさに紛れて裾を割り
滑らかな太ももにまで手を這わせる
ディラは寝相がいいのか前の合わせもほとんど乱れていない
もっとゆるゆるの夜着を用意させねば
なんかこう、朝起きたら肩まで半分むき出し、みたいになるやつを
できたら例えば、身体を起こした拍子に乳首がチラッ、的な感じで
下半身なんか太ももの付け根まで丸見えで、いっそ脱げ、みたいな
まあ今ディラが着ているのは夜着ではないが
「んぁ……グリフ……ん、んふ……」
口を大きく開けさせて唇で塞ぎ
舌を上顎の手前から這わせていく
左右に動かしながらゆっくりと一番奥まで舐めてやると
ディラの口から大量の唾液が溢れた
今度は彼の舌の下に潜りこんで下顎をたっぷり味わって
ようやくヒクヒクと蠢く舌を絡めとる
それでも激しく吸い上げたりはせず
つつつ、と舌先で彼の舌の厚みをゆっくりなぞる
右の奥から先端へ
先端を軽く噛んで
今度は先端から左の奥までなぞっていく
チロチロと何度も往復するとどうやら付け根の横の辺りが感じるらしい
そこを優しくしつこく舐め続けると
ディラの身体が震えて小さく何度も跳ねる
グリフの腕に縋る指はさっきまで爪を立てていたのに
今は弛緩して辛うじて引っかかっている程度だ
ディラの舌を大きく吸い自分のと舐めあわせる
溢れる唾液を味わいながらグリフは股間の猛りをディラに押し付けた
ゆるゆると動かしながらそっと濡れた唇を離す
「ディラ……わかるか?俺はお前が欲しい」
「あ……ん……」
「愛してる。ディラ……早く、もっと、俺の愛を受け取ってくれ」
「グリフ……待っ、て、手を……っ」
このまま多少強引ではあるが
ディラを抱いてしまえば満足させられる自信はある
王のご寵愛を受けるためにじっと後宮に控え続けてきた身体は
ほとんど愛を知らず無垢で欲望に忠実らしい
口づけだけでこんなにも肌が火照るほど快楽を強く欲しがっている
端緒を与えれば溺れるだろう
本人の意志とは無関係に
グリフはディラの顔を間近でじっと見つめた
真っ白い肌を覆う柔らかい産毛が陽の光に輝いている
首筋まで赤くして短く荒い呼吸を繰り返して
切なそうに眉根を寄せているディラの表情は完全に欲情している
グリフは小さく息を吐いて
ディラを撫で回し押さえ込んでいた手を放し
軽く彼の着物を整えて身体を起こした
「ディラ、もう、しない。すまなかった」
「……わ、私……私の方こそ、すまない」
「怖がらせたか」
ディラはぷぷぷっと首を振った
銀の髪が寝具に散る
グリフは苦笑いするしかなかった
ディラの両手は自分の着物の胸元をぎゅっと掴んでかき合わせている
「その……朝は、少し、抑えが難しいのだ」
「そ、そうか。しら、知らなくて」
「ディラは朝、勃たないのか?」
「少し、だけだっ。あんな、グリフみたいに、あっ……!」
グリフはするりとディラの股間に手をやった
熱を感じるし反応している
ディラはどうしていいかわからないのだろう
泣きそうな顔で身体を強張らせている
グリフは彼の頬や額に唇で触れながら手を離す
「ディラ……ああいうのは嫌か?」
「あ、ああいう?」
「俺に肌を撫でられることだ」
「………………嫌では、ない」
小さく小さくディラは答えた
視線を逸らして恥ずかしそうに
それでもグリフはその答に安堵した
「きっとディラは俺が好きなんだ」
「……好きだと、言ってる。聞いていないのか」
「もうすぐ愛になる」
「……本当か?どうすればいい?」
「俺の愛が欲しいと思えばいい」
「……うむ」
「口づけだけじゃなくて、何もかも愛して欲しいと思ってくれ」
「グリフに、愛される……」
「そう」
ディラは呟くように繰り返した
グリフは優しく彼の髪を撫でる
「愛してる。だから、ディラを愛したい。全部を」
「……うむ」
「身体中に、口づけを」
ディラはその言葉を想像して
自分の身体がピクンと震えたのを不思議に思った
グリフの、あんな口づけが、身体中に
腹の奥にキュウっと熱い塊が生まれる
それがなんなのかはわからなかったけれど
「だけど、少し急ぎすぎたな。すまなかった」
「いや……」
「今日は休みだから、一日中一緒だ」
「本当か!?」
「ああ。一緒に出かけたい所もある。いいか?」
「うむ!」
「では、朝餉にしよう。支度をしておいで」
グリフが手を差し出すと
ディラはおずおずとその手を掴んだ
それでも片方の手は胸元の合わせを掴んだまま
随分警戒されてしまったなとグリフは少し傷ついた
「部屋まで送ろう」
「かまわぬ」
「……では、あとで」
ディラは軽やかに寝台を降り
着物の裾と髪を翻して寝所を出ていった
遠くでドアが閉まる音を聞いて
グリフは今のディラの痴態をおかずにがっつり自分を慰めた
枕に顔を埋めてディラの残り香に鼻を鳴らし
腰を高く上げて肩で自分を支えて全裸で自慰に没頭する若き隊長の様子は
端から見れば完全に変質者の態だった
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