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第24話

本編です ◆ 大切な人に挨拶を済ませ ほんの少し距離が縮まった日の翌日の朝 グリフとディラは朝餉を仲良く囲んでいた 雨降って地固まるなどと申します せっかくだから地面もチンコも硬くしようぜ!と 夕餉の後にディラを誘おうとしたグリフを ディラの従者が冷ややかに止めた 「マディーラ様はお疲れでございます」 その一言で またしても甘い夜は遠のいたのだ 「今日は、家に帰ってくるか?」 「ああ。ただ、昼に戻れるかどうかは」 「あ、私も出かけるのだ。昼餉はここでは頂かない」 「どこへ?」 昨日確かに将軍夫妻も養父母もいつでもおいでと言ってくださったけれど グリフが不思議に思っているとディラが微笑んだ ああ、今日も綺麗だ 「王宮へ、所用が」 「そうか。前国王陛下に?」 「いや、お妃様がお呼びだそうだ」 「そうか」 「それから」 「うん?」 「……ハルト様のところへ、お詫びにあがってもいいだろうか」 とても言いにくそうに申し訳なさそうに ディラはグリフに尋ねた ディラが愚かな振る舞いをするはずがない グリフは何の不安もなく頷くことができた 「お詫び、というのは?もちろん、ディラが行きたい所へ行くのを止めたりはしないよ」 「うむ……昨日、お気を使わせてしまったし、色々と持たせて下さったし」 「では、ディラ。お詫びではなくお礼ではないか?」 「……うむ。それで、よいだろうか?」 「ディラがハルト様をお慕いしていると、きっとちゃんと伝わるだろう」 グリフォードがそう請け負って笑うと マディーラはほっと息をついて頷いた きっと昨日の話の続きをするのだろう 実はちょっとのろ気たかっただけなのだと 花が咲くような可愛い笑顔で ハルト様はお見通しかもしれない 何か手土産を用意させようかと問えば自分ですると言う 「花は、喜んでくださるだろうか?」 「ああ、花を嫌いな人はいない。俺も好きだ」 「後宮で育てていたのを、こちらへ持参していて、あまり外では見ない品種なのだ」 「そうだったのか。たくさん?」 「うむ。後宮に、私の庭を設けていただいていて、そのほとんどを」 「うちの庭を好きにしていい。だれぞに声を掛ければうまく計らってくれる」 「ありがとう、グリフ」 「ディラは何も飾らなくても本当に綺麗だけれど、花の傍にいるとますます美しい」 「……少し、恥ずかしいな」 「そうか?本心だが」 「褒めてもらうことは多いけれど、グリフはやはり特別だ……」 白い頬を薄く上気させて ディラがはにかんで目を伏せた グリフはその様子を眺めるだけでしあわせな気持ちになる 愛とは偉大だ 相手の特別であることがこんなにも嬉しい 「ディラは花が好きなのだな」 「うむ。それで呼ばれるのだ。王宮で、王家の方々が育てていらっしゃるのをお手伝い申し上げていて」 「なるほど。馬で行くのか?」 「そのつもりだ」 「気をつけて」 「うむ」 ディラは朝っぱらから華やかに微笑み グリフォードは機嫌よく出勤した いつもと変わらない雑多な時間を過ごす 大した事件もない平和な昼下がり グリフは図らずもディラを自分の部下に紹介することになる なぜなら若い隊員が彼を不審者として連行してきたからだ 「隊長、その、不審な男を一人、確保したのですが……」 「ん?通常通り動かせばいい。何か問題が?」 「はぁ、その……」 王宮に現れる不審者は結構多い 大きな門から続く大通りと広場までは誰でも入れるので 手入れの行き届いたそこで憩う人も集まるし 首都へ来た記念にと地方の人も訪れる 故意か過失か そこから立ち入り禁止の場所まで足を伸ばす人間はあとを絶たない たいていは悪気がないので隊員が見つけ次第退去させ 悪意を感じる者は駐屯所へ連行して事情を聞く 日常的なその任務はよほどのことがない限り隊長のグリフォードまで逐一報告されない もちろん一日の終わりには全件報告書が回ってくるけれど 「副隊長がおっしゃるには、どうも、その、隊長のお知り合いのようでして」 「んー?名は?」 「マディーラと」 グリフォードは飲んでいたお茶を吹いた ものすごく勢いよく隊員の顔に向かって 決して懲罰的な意図はなくただの偶然だが 「ま、ま」 「いかがしましょう?」 若い隊員は顔を拭きながら至極真面目に聞いてくる どこにでも疎いやつはいる 王宮の内外に知れ渡るマディーラという名を知らない隊員がいても不思議はない ディラは正式な王家の人間でも官職者でもないのだから でもよくもまああんな華やかで綺麗な男を捕まえられたもんだ 美醜の基準は人それぞれではあるけれど グリフが何かを言おうとした時 執務室に飛び込んでくる二つの人影 一人は副隊長スペラで、もう一人はディラを捕まえたという若い隊員の先輩だ スペラは爆笑しながら、先輩隊員は真っ青な顔で 「申し訳ありませんっっ!!!」 「超ウケるんだけどッッ!!!」 先輩隊員は若い隊員に鉄拳を食らわせて 執務机に額を擦り付けて大声で謝罪を繰り返し スペラはグリフォードの肩をバシバシ叩きながら笑っている 素手での接近戦を得意とするスペラに叩かれると結構痛い 痛いってば 「もう、よい。マディーラを帰せ。立ち入り禁止などという概念がないのだろう」 後宮からほとんど出なかったとはいえ 王宮内に入っていい場所とダメな場所があるなんて 彼には多分思いつきもしないのだろう グリフが口元を拭きつつそう言うと スペラは楽しそうに笑いながら無理無理!と言う 「何が無理だ。不審者ではない」 「隊員たちが放さないね。すっかり人気者だ」 グリフォードは深く嘆息して重い腰を上げた そりゃそうだ あれほどの男なら誰しもが群がるだろう ……誰しもと言うのは語弊があるな 今目の前に彼を捕縛するような男もいるわけだし 先輩にコテンパンにされてふがふが言ってる部下を尻目に グリフは駐屯所の一階にある食堂へ向かった

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