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第29話

【番外編】 変態将軍の蛮行 02 ◆ 夜の食事は建物の中で食べられるけれど 基本は海辺で幕営だ 訓練に付き合ってくれている上官も指揮官も同様だけれど ここは水軍本部 指揮官を務めるほどの立場のアルム隊長には自由に使える部屋があった しかも結構広くてさらに寝台まである 仮眠室であるはずがないような部屋だったけれど スペラは大人で憧れの隊長に思いがけず誘われて舞い上がっていて そんなことに頓着している暇はなかった 「隊長……あの、俺、私はっ……」 「なんだ?」 「その……隊長に、愛してもらえるのでしょうかっ」 スペラのその問いは 丸裸にされて寝台に横たわりアルムの下敷きになってから発せられた 何を今更 そう言われるかと思ってオドオドと目を泳がせるスペラに アルムは優しく色っぽく微笑んで頷く 「たっぷりと。スペラ……愛してやるぞ」 「はいっ」 ねっとりした濃厚な口づけに始まり 焦らすような優しい愛撫 若い反応を楽しむような笑い声 そして繋げられた部位の熱い体温 今までの性交とはまったく違う愛され方に スペラは翻弄されて喘ぐことしか出来なかった アルムはそんなスペラの髪や頬を何度も撫でて 上手だな、可愛いぞと褒めてくれる 「は……はあぁ……っ!あ・あ・あ……っ」 何度目かの絶頂 身体中が腫れぼったいような熱をはらみ どこを触れられても痺れるような快感が脳と下半身を直撃する 身体の奥底に愛を注ぎ込まれて その満足感に極まってまた頂を見る アルムとの愛の営みはスペラの想像など遥かに超えるものだった 隊長ほどの軍人になると、こんなに愛情深いのかぁ…… 宣言どおりにたっぷりと可愛がってもらい 深い快感と愉悦の余韻に浸りながら スペラは今まで味わった事のない事後の感覚を噛み締めていた 「疲れたか?」 「いえ……こんなの、初めてで……」 「そうか」 アルムは腹ばいに寝そべるスペラのこめかみに口づけを落として身体を離した スペラはアルムの肌が触れないことを寂しく思った ああ、なんて気持ちいいんだろ……さいこー…… まだ尻の奥はヒクヒクと痙攣している 入り口の回りは蕩けて熱い 隊長のアレ、すっごいイイんだもん 反り方が俺のにピッタリでさぁ…… 太さも硬さもたまんないし…… 長くて奥まで届くし…… スペラはまどろみ始めていた 数日の厳しい訓練の疲れと優しくも激しい性交 夜はまだ続くとはいえ 何度も達して満足しきった身体は睡眠を望んでいた だから 耳元で耳障りな音がしてもすぐには反応できなかった 「腕を」 「……?」 「可愛がってやるぞ、スペラ」 「隊長……?」 両方の手首に柔らかく分厚い布が巻かれた 重いまぶたを開けてそれを確認し さらにその上から革でできた手枷が填められるのを なぜか他人事のように眺めていた ……手枷? 音の正体は鎖 アルムはスペラの手首に填まる手枷を天井から降りている鎖に繋いだ 鎖は太くはないけれど人間が引き千切れるものではない 天井に直接埋め込まれているらしい滑車に渡る鎖だって外れそうもない ……ちょっと、待て!鎖って、なんで!? スペラの頭が正常に動き出したときにはとっくに手遅れだった アルムの手は手枷と繋がっていない方の鎖の端を引き スペラは引きづられて身体を起こすしかない 鎖はどんどん巻き上げられて あっという間にスペラは真上に両腕を上げて寝台の上で膝立ちになった 「た、隊長、これは」 「いい格好だ」 「じゃなくてっ」 「男好きのする、男を欲しがる身体だな、スペラ?」 「……!」 さっきまでの優しい時間を一瞬で揶揄されたような気がした 男が欲しいんじゃないのに! スペラは悔しさと恥ずかしさでアルムを鋭く睨み付ける 「気に障ったか……そういう顔もいいが、スペラは可愛く喘いでいる方がいいな」 「……外してください」 「褒めているのだ。久々にたっぷり時間をかけて愛したい男だ」 アルムの声は優しく、笑っている 無防備に曝されたスペラのわき腹を手のひらで撫で さっきよりもずっと甘い口づけをくれる もっと、愛されちゃうの?俺…… スペラの身体はその期待だけで高まり始める それに気づいたアルムが色っぽく囁いた 「いい子だな、スペラ。さぁ……俺に愛されたいか?」 「は、い」 「さっきのは、確かめただけだ。スペラがちゃんと俺の愛を受け入れられるかどうか」 「あ……でも、俺、さっきもすごくて……」 「もっと欲しくはないか?」 「欲しい、です、けど」 「大声を出しても、暴れてもいいぞ」 大声? 暴れる? 確かに喘ぎまくりの仰け反りまくりだったけど こんな風に拘束されるほどだっただろうか 次は口を塞がれたりして? そんな考えが霧散していく 先ほどの性交でも怖いくらい感じて何度も放った アルムは強く深くスペラを抱き スペラは身体が別物になったような気にさえなっていた あれよりも、もっと 恍惚とする間もなく スペラの肌を撫で回していたアルムの手が スペラの足の間を通って臀部に伸びる 「ふ……まだ熱いな」 「くぁ……っ!!」 アルムの指がゆっくり捻じ込まれて 鎖がガシャンと音を立てる アルムのものを咥え続けたそこは 再び与えられた刺激に悦んだ それがたった指一本であっても放さないように締め付ける 「あれだけ俺ので突いても、よく締まるな」 「あ、あ……隊長……!」 可愛がられ新しい快感を教えられたそこは敏感で貪欲だった ジリジリと膝をずらして股を開き 足の指でぎゅっと寝具を掴んで アルムの腕をうまく誘い込もうと臍の辺りを持ち上げるように腰を差し出す アルムは楽しそうに笑いを浮かべてスペラの後ろを優しく弄る 足りない 指じゃ、イケない ああ、いっそ尻を向けて突き出せば挿れてもらえるだろうか そんな格好が許されるのか? 強請っていいのだろうか、指揮官であるこの人に でも、この人のが欲しくておかしくなりそうだ……! 「スペラ……もっと楽しい事をしようか」 「んぁ……っ!お願い、します、もっと……!」 「お前ならそう言うと思った」 アルムの声が弾んでいる 淫靡で艶かしいはずの雰囲気は彼にとっては楽しいものなのだろう アルムがスペラから指を抜いて寝台に立ち上がると 彼の股間がスペラのちょうど顔の前にくる 欲しくてたまらないソレを目前に突きつけられて スペラはうっとりと口を開けた 黒々とそそり立つソレが欲しい 開いた口からはタラタラと涎が垂れる 「いい顔だな、スペラ」 「あ……隊長……」 「舐めたいか?舌を出せ」 鎖をピンと張り肩を後ろへ反らし できる限りアルムの股間に顔を寄せ スペラは舌を伸ばした それでも舌先にわずかに触れるだけの距離だった 息は荒くなり涎がさらに垂れていく においとか味とか熱さとか 口の中で感じたい さっきの性交よりも感じさせて そんなスペラの髪をアルムは優しく撫でる 「少し我慢しろ。ゆっくり楽しもう」 「や……」 卑しく舌先で触れ続けていたアルムの性器が離れてしまった スペラの頭の中はソレで貫かれる衝撃への欲望でいっぱいだった アルムはスペラと同じように膝で寝台に立ち 優しく腰を抱きながら口づけた スペラはうっとりと目を閉じてそれを受け入れる 「これが何かわかるか?」 「んぅ……」 柔らかく分厚い舌が引き抜かれた口に 何かが押し当てられた スペラは目を閉じたままそれに舌を這わせ口内に受け入れる 硬く冷たい滑らかな何か 歯に当たるとカチリと軽く頼りない音がする 中が空洞なのかもしれない スペラの体温が移って簡単に生暖かくなる何か…… スペラが薄く目を開けると 楽しそうに細められたブルーの瞳が目の前にある 自分の口に入っている何かの全貌はよくわからないけれど 形状は長く太い まるで今一番欲しいもののように 「あまり締めるなよ」 アルムはそう言いながら スペラの口から抜き出した何かを彼の後ろへ宛がいゆっくりと挿入した 熱く蕩け 熱い楔を受け入れていたそこには 生暖かい程度では冷たくさえ感じて スペラは身を捩った 痺れ始めた腕を戒める鎖が鳴る 「締めるな、スペラ。割れるぞ」 「……え?」 「ほら……締りが良過ぎる。緩めろ」 「え、あ、ちょ……」 「痛い思いをしたくないだろう?緩めなさい」 割れる……? さっき口で確かめた軽く硬い質感が思い出されて スペラは一気に血の気が引いた 冗談じゃない その異物はアルムの性器ほどではないけれど 後ろで受け入れると相当の圧迫感で奥まで続いている 待ち望んだのと似た感触に ソコはそれを喜んで頬張り締め付けてしまう それはスペラの意志ではない だから 「た、隊長、やめてください、抜いて、くだ」 「これはお前が欲しいモノではない。そんなに嬉しそうに締めるな」 「だめ、です、おねがいします、おねが」 「落ち着け。力を抜けばどうということはない」 真っ青な顔で激しく首を振りながらスペラが懇願しても アルムはスペラの腰を抱えてそれをさらに奥へ押し込む スペラはそのつるつるとした頼りない感触に悲鳴をあげた 敏感なソコは指でも性器でも凶器でも受け入れてしまう だからこそ恐怖に身体が強張る 生まれる快感があるから 「隊長!だめです、だめです!」 「ああ、萎えてしまったか」 「ひっ……!」 ガンッという鈍い音が響く スペラが暴れて鎖が引かれたのだ もちろんビクともせずスペラは絶望を味わっただけだった アルムの手がスペラの性器を優しく撫でる ゾクゾクとそこから快感が広がる 思わず後ろを締めてしまいぞっとする恐怖で我にかえる 「気持ちいい事をしてやろう、スペラ。遠慮せず楽しめ」 スペラはもう何も考えられなかった 目の前の指揮官はやめるつもりは微塵もない事だけはわかった だからとにかく 挿入された異物を締め潰さないように 後孔を緩めて開かなくては 慣れない動きを求めて必死で尻の筋肉を動かす 「スペラ、入り口を開こうとすると、奥が締まるぞ」 「うあぁ!あ……あぁ……はぁ……」 「ほら、力を抜け」 甘く柔らかい声でアルムが囁きながらスペラの性器をゆっくりと扱く 恐怖に萎えてしまっていたそれは アルムの手淫に反応してしまう そんなスペラをアルムは満足げに眺める スペラは眺められている事を認識する余裕もなく ただ必死に耐えていた 痺れて感覚のない腕のように下半身の感覚が消えればいいと願う 「……汗をかいているな」 「ひっ」 「かわいいな、スペラ。尻がヒクヒクしている」 「たいちょ、たいちょう……!」 「上手だな、普通ならとっくに怪我をしているのに」 「や……やめ」 「もう少し楽しめるな」 「やぁ……!」 スペラの全身は汗でびっしょりだった 小刻みに震え尻は痙攣している アルムはスペラの胸元を流れる汗を舐め取り 淡い茶色の乳首に舌を這わせる 緩く扱き続けられる性器への刺激だけでもやり過ごせなくて混乱しているのに 大好きな乳首への愛撫に身体は勝手に悦んでしまう 鋭い快感は脳天を突き 声をあげてしまうと同時に後ろに入れられたモノをクンッと締めて奥へ誘いこむ 自分の身体の反応に驚き水を浴びせられたような恐怖に瞠目する もうダメだ このままじゃ 「隊長……!」 「スペラの乳首は綺麗な色だな。少し大きい……何か飾りをつけてやろうか」 飾り!? 何を言い出すんだこの人は 自分の乳首に何かをつけられる事を一瞬想像して それと同時に強く歯を立てられて仰け反る 飾りに伴う痛みを擬似的に与えられたように思えて 隷属させられたような倒錯した気分を味わった それは下半身に直結して興奮と恐怖を煽る 声を堪えて頭を振って 腹の奥の筋肉が痙攣するほど力を逃す アルムは楽しそうに口と指先でスペラの乳首を愛撫し続け その間もゆるゆると性器を撫でている 「も、ゆるして、勘弁してください……」 「気持ちいいだろう?」 「……は、い」 そう 死ぬほどの快感だった 自分の浅ましい反応でジリジリと自分自身を追い詰めてしまう恐ろしさも しっかり快感を教え込まれた身体に与えられる優しい愛撫も 頭に白く靄がかかったように溶けるほど気持ちいい スペラの返事にアルムは薄く笑う 乳首を噛んで引っ張りその先をチロチロと舌で舐る 痛みとくすぐったさと堪らない甘い快感 思う存分締め付けて そうする事で敏感な内壁を圧迫して感じまくりたい こんな厄介な異物じゃなくて この人のを突っ込まれたい 「震えているな。限界か?」 「たすけ、て……もう、無理です……!」 「よしよし。ちゃんといかせてやろう」 「やめ……!」 アルムは鷹揚にそう言うと 硬く緊張したスペラの尻たぶを手のひらで叩いた パァンと乾いた大きな音がして スペラは息を呑んで自分の手に爪を立てる 尻はすぐに熱を帯び 尻穴の奥は香油だけではないぬめりでさらに蕩けだす アルムの指は尻の谷間をくすぐる様に引っかいて何度も往復し スペラの尻に埋まる異物の端を爪先で弾いた そのわずかな刺激にもスペラの身体は愉悦を覚えて震える 異物を伝ってさっき出されたアルムの精液が垂れ落ちていく アルムの手が強めにスペラの性器を扱き始める 追い詰められる恐怖にスペラは鎖を鳴らして逃げようとするけれど その動きさえ異物の存在を強く思い知らされる結果を招く 「んぅ……!う、くっ、たいちょ、隊長……!」 「ほら、スペラ。締めすぎだ」 「やあぁ!だめ、うしろ、しまっちゃう、だめぇ……!」 「こんなにして、まだ出さないのか……かわいいやつだ。もっと欲しいんだな」 「やめて、やめて!だめ!」 「もっと愛してやろう。かわいいスペラ」 「ひぅっ……!……!……っ!!」 アルムがスペラの性器を口に咥えて 音を立てながら激しく舐め嬲る 敏感な鈴口もビキビキに筋の張った裏側も感じすぎて痛いほどの愛撫 出ちゃう いっちゃう 締めてはダメだと必死に緩め開こうとする筋肉と 意志とは無関係に与えられた快楽を余すことなく享受し楽しみたい身体は拮抗し 尻は不自然に痙攣を続け 太ももや腰はガクガクと震えている 滴る汗は寝具を濡らす 鍛え上げられた腹もわき腹も筋肉がよくわからない収縮を繰り返している 射精へ向けて駆け上れば 絶対に後ろを強く締めてしまう 放つ瞬間は自制なんか出来ない そんな事になれば冷たい何かが自分の奥で割れてしまう 出したい 締め付けたい! 解放してしまいたい! 恐怖は目の前の快楽に負ける アルムの巧みな口淫に 最初からスペラには逡巡の猶予などないのだ 動く事もなく後孔を穿ったままの異物 下半身が溶けてしまいそうな淫猥な性技 加えてアルムの指はスペラの両方の乳首を摘み それを恐ろしく優しく撫で潰し始めた 「あああ!うあああ!ああ!あああ……あ、ああ……!!」 喉からではなく激しく収縮する腹筋に押し出されたような悲鳴をあげて スペラは目を見開いて天井を仰ぎ 強く後孔を締めあげて異物を内壁に押し当て それでも身体の別の場所はそれに抗おうと緊張し 経験した事のない感覚で身体中をグチャグチャに満たして 快感を思い切り爆発させた 一瞬遅れて訪れた射精は声も出ないほどの絶快 鎖が何度も重い音を立てる やがてスペラは自失し 自分の両手首に繋がる鎖にすべてを預けてだらりとぶら下がった 「くく……なんて上手にできたんだろうな、スペラ」 アルムは口元に垂れる白い粘液を舌で舐め取りながら 嬉しさを隠さず笑った 荒い呼吸を繰り返しボタボタと汗を滴らせる部下を 満足げに抱き寄せる 「いい子だったな、スペラ。ひどく可愛くて、なかなか興奮したぞ」 アルムはそう言って まだひくんひくんと小さい絶頂を繰り返すスペラの尻に手をやり そこに入っている異物を勢いよく抜き去った その拍子にスペラはまたガクガクと震えながら吐精する 「かわいい部下の身体に、傷をつけるわけがないだろう」 アルムは手にした異物を高く放り投げる 放物線を描いて床に落下したそれは 甲高い音を立てて何度か跳ね 割れる事もなく部屋の端へ転がっていった 「あ……あぁ……」 「どうだった?恐怖さえ捨てさせる快感は?危険を承知で達した瞬間は」 「も……」 アルムはまだ目の焦点の合わないスペラの太ももを自分の肩に抱え上げ 軽く何度か唇に口づけを落とすと スペラの後ろを一気に貫いた ようやく与えられた欲しかったその楔に スペラはまた少しの白濁を撒き散らす 「ふ……さっきと具合が変わったな。締め付けはきついが、奥の柔らかいところが俺のを掴むみたいに動いている」 「は……あはぁ……!すご……!」 「好きなだけやろう、スペラ。これが欲しかったのだろう?」 「は、いっ……もっと、たいちょぉ……!」 「アレの欠点は体温を奪うところだな、暖めてやろう」 「んぁあっ!たいちょ、ひぁ!たいちょー……たいちょー……!」 「かわいいぞ、スペラ」 硬い異物を咥えこんでいたスペラのそこは わずかに冷えていた かわいそうに、よしよし そうスペラの耳元で囁きながら アルムはほとんど宙吊りのような態勢のスペラを何度も突く 逃げることも感じすぎる場所を避ける事も出来ないスペラは 為すがままに太く熱いアルムの性器で突き上げられ続けて 夢のように甘い地獄のような快感を与えられた 性器からは何も出なかったけれど 奥の奥まで挿入されて細かく揺さぶられては達し 背面から抱え込まれて激しく下から突かれては達し 手枷を外されて寝台に寝かされて抱かれていると気づいたときには 何もかもがどうでも良くなっていた ただひたすらに自分を弄ぶ楽しげに笑う男を求めて 孔という孔を全部差し出した 特別訓練の貴重な休日の前夜にそんな蛮行に付き合わされて スペラは翌日当然海に行くこともなく ぐったりと寝て過ごした 翌日の訓練には当然参加したけれど 風の噂でその休日一日で他に三人が食われたという話を聞いた 指揮官は 今日も涼しげに穏やかに海辺で訓練を見守っている スペラの目にはもうどうしたって 次のカモを物色している変態にしか見えなかった 訓練を終えての最終日 色んな思いを胸にスペラは同僚と一緒に自陣へ戻ろうとしていた 結局噂で聞いた食われた新人は二十名近くにも及んだ 恐ろしい しかも程度の差はあれ誰一人普通の愛ある性交では済んでいない 眩暈がする あんな変態、野放しにしていいのか 「スペラ」 「……は」 噂の変態が近づいてくる 毒牙に掛かっていない者から見れば 相変わらずの穏やかな美丈夫 にこりと微笑んで手にしていた小さな袋を投げて寄越した 「やろう」 「……は。ありがとうございます」 「次に会う時は、そのように」 「?……は」 「励めよ」 すっきりと背筋を伸ばして立ち去るアルムを見送る その袋をとりあえず仕舞い 数人と馬を駆けて自陣に戻り 報告を終えてようやく自分の部屋へ帰りつき 汗を流そうと軍服を脱ぎ散らかす ぽとりと落ちる袋に気づいたのはその時だった 「ああ……なんだ?」 手のひらに乗る小さな革の袋は それ以上の重さを感じさせない 中身がないのか? 一応慎重に紐を解き逆さにして振ってみると ころりと転がり出たのは二つの金属だった 小指の先ほどの半円を描く金には石が埋められ飾りが彫られていて その両端を細い針が繋げている よく女性が耳に穴を開けて飾りに…… 「……あのド変態!!!」 スペラは顔を引きつらせて手が震えるほどその装飾品を握り締めた ち、ち、乳首に飾れと!? 次に会う時はそのようにって、そうやって見せろってことか!! 馬鹿じゃないの! そんな変態じみた事、するわけねぇだろ!! スペラは怒りで顔を赤らめながら その金属片を袋へ放り込むと 窓の外へ投げ捨て……ようとしたが クソッと毒づいてベッドの傍にある引き出しに叩きこんだ

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